人間は身体機能よりも感情から老け始める

どんな仕事でも、ベテランと言われる年齢になってくると、いつの間にか新しいことに食指が動かなくなる。面倒くさいと思うことが増えてくる。こうしたことも人間は身体機能よりも、心や感情から老け始めることを示唆している。

現実に30代、40代からうつ病が増加して「何もやる気が起きない」と苦しむ人が目に見えて多くなる。そこまで悪くはなくても、さまざまなことに対してガツガツしなくなる「まあ、いいや症候群」が現れやすくなる。

なぜ政治家は70代でも権力に執着するのか

一般的に若いころは「出世したい」「よりよいパートナーを手に入れたい」「思いどおりの仕事をしたい」などの夢や欲望があり、頑張る気力もあり、徹夜も辞さない体力もあるものだが、ある年齢から「もう出世などしなくていい」「子どもの成績もこんなもんだろう」と、執着がなくなってくる。それはそれで恬淡てんたんとしていて、欲望から超越できたのでよいではないかという見方もできるけれども、若さはない。

政治家は60代後半や70代になっても、権力に執着を示す。「いい歳をして、生々しい」と思う人もいるだろうが、概して年齢のわりにエネルギッシュで若々しく見える。最近の草食系と言われる10代、20代からガツガツしていない若者の出現は、社会として老化していると言えなくもない。

年齢が上がっていくにしたがって、体を使っていないときの衰え方が、若いときと比べると急激になる廃用が起こりやすくなる。

「まあ、いいや」で思考停止していると脳は衰弱する

体を使ってない、あるいはもう生殖器を使っていない状態が恒常化すると、どんどん衰えていく。「まあ、いいや症候群」で頭を使っていないと、脳も衰弱していくのである。「まあ、いいや」的な消極的生活によって感情が老化すると、追いかけるように体や脳、生殖器などの老化を進めてしまう。

感情の老化は、いちばん最初の段階で食い止めなければいけない防波堤なのである。

医学が進歩して80代、90代まで生きるのが当たり前になってくると、「60歳で定年を迎えたら後は隠居」というのでは、老年期が長すぎる。ましてや40代で感情が老化してしまうと、とんでもなく老後が長い人生になってしまう。70代くらいまで、現役のつもりで俗事に興味を持ってもらいたいものだ。