ルーティンではないことをすると前頭葉が働き出す

では、前頭葉はどうやって使えばいいのだろうか。実は人は前頭葉の機能を欠いても生きられる。しかし、この部分がないと人間らしくなくなってしまう。動物の脳と比較すると、人間は異様なほど前頭葉が発達しているのである。

前頭葉は、決まりきったルーティンの状況ではあまり使わない。仕事でも家庭でも、毎日同じ作業を繰り返している限り、活動は低調だ。

だが、ある日突然、奥さんや恋人とは別に好きな女性ができて、この女性とどこでデートしようかとか、どう喜ばせるかとか、いろんなことを考える。つまりルーティンではないことをするときに前頭葉は俄然、働き始めるわけだ。

考えてみると、日本の学校教育では前頭葉を使う教育はほとんど行われてこなかった。言語機能や計算機能を伸ばす、側頭葉や頭頂葉の教育には熱心だったのだが、習ったことを疑うとか、まったく知らない場面にどう応用するかといったことや、プレゼンテーション型の授業が少ないことなども含めて、前頭葉を使う練習はしていない。

安定した生活の中でドキドキを生み出す方法

日常生活を安穏に暮らしていると、前頭葉を使うシチュエーションがあまりない。エリートコースをずっとたどり、毎日のルーティンワークをこなしていればすむような仕事を続けてくると、前頭葉への刺激がほとんどないまま、40代、50代を迎えることも起こりうる。おそらく、こうした人は脳の老化が速い。

その反対に波瀾万丈でハラハラドキドキするような状況では、前頭葉が活発に働く。端的な例は起業することだろうが、いま、勤めを持っている人には非現実的だ。となると、たとえばネットで株式投資でもいいだろう。

もしくは直ちに起業しなくても、定年後の起業プランを考えてアイデアを練るのもいい。前頭葉を働かせるだけでなく、将来、実際に役に立つかもしれない。定年後の起業支援をしている知人に聞くと、40代くらいから起業に備えてアイデアを検討していた人は成功するけれども、定年してから何をしようかと考える人に、いいアイデアが出たためしがないというのである。