はじめに伝えたいこと
毎年、子供の将来就きたい職業にランクインしている「研究者」。しかしながら、実際に研究職についた人の実態を知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。人類の知識の境界を広げるべく、日々研究に励む研究者の背後にはどのような現実があるのでしょう。
この記事では、研究者のキャリアパスと若手研究者の待遇を、筆者の体験をもとにお伝えできればと思います。
読み進めていただく前に、一点断っておきます。このような話題は「研究者vs国」の対立構造に落とし込められてしまうことが多いですが、この文章はそのどちらも批判するものではありません。研究の分野によって事情は変わってきますし、「不遇な研究者が可哀想」といった、あるあるの記事を出したいわけではないのです。
「研究者が悪い」や「国が悪い」などというふうに、短絡的に善悪を決めたいわけではなく、さまざまな背景を持つ読者のみなさまに、私が感じていることを伝えることで、議論が起きればいい。そうやって様々な意見が飛び交うことで、本記事が日本の研究者の働き方や生活をできるだけ良い方向に向かわせる助力になればいい――。そう思っています。
より良い研究環境が構築するためのアイデアや意見を収集するプラットフォームに、本記事がなれば幸いです。
「研究者」とは
研究者の仕事は、研究で新たな知識を生み出すこと。この国でも、たくさんの研究者が新たな発見を求めて日夜研究に勤しんでいます。
研究者には大きく分けて、2種類います。ひとつは、大学などの研究機関で学術的な研究に取り組む研究者。もう一方は、企業で研究職として働く研究者です。
この記事では、前者の学術研究職(アカデミア)に絞った説明をすることにします。
通常、アカデミアの研究者になるには、大学院で博士号の学位を取得する必要があります。学位とは学問を修めた称号のことです。