バラエティ番組で過激な発言で世間的にはお騒がせ女優・タレントのイメージもある遠野なぎこさん(44)。「お前など早く死んでしまえばいい」といった誹謗中傷をされることもあるが、「講演やインスタグラムを通じて同じ摂食障害などに苦しむ人々のお役に立てるよう、『あなたは一人ではない』というメッセージを発信していきたい」という――。(後編/全2回)

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遠野なぎこさん
写真=事務所提供
遠野なぎこさん

略奪婚した再々婚の相手を追って自死した母

「食べたら吐けばいい。そうすれば太らない」

母親から悪魔のささやきのようなアドバイスを受け、それをそのまま実行して以来、摂食障害に苦しんでいる女優の遠野なぎこさん(44)。

幼い頃から母にひどい虐待を受け、さらには前述のような母からのすすめで摂食障害に陥り、現在まで過食、拒食、過食嘔吐を繰り替えしている。

それとリンクするように、強迫性障害(強い不安やこだわりによって日常に支障をきたす病)、醜形恐怖症(実際には存在しない外見上の欠点や些細な欠点にとらわれ、多大な苦痛が生じたりする病)、鬱病、アルコール依存症、男性依存症も引き起こしていた。

これらすべては母から受けた虐待に起因していると考えられる。

「実の母親に虐待をされて愛してもらえない、そのうえ『お前は醜い』と言われ続けて育っているので、自分に全く自信が持てません。自己肯定感が異常に低いんです。さらには他者を心の底から信用できないし甘えられない。だから人と良好で継続的な信頼関係を結ぶのが難しく、恋人や配偶者とも関係が長続きしないんです」と遠野さんは自身を分析する。寂しさや空虚さを埋めるように、アルコールや不特定多数の男性に依存をしてしまうのだ。

一方、仕事は女優業に加え、2010年ごろからテレビのバラエティ番組で新たな活路を見出し、順調だった。プライベートで疲弊していようとも、オファーを受けた仕事は責任をもってきっちりこなしていた。

特にバラエティでは、望まれる以上に過激な発言をして爪痕を残したので、出演依頼がどんどん舞い込んだ。さらには理解のある医師とも巡り会うことができ、病は完治せずとも心身の調子はそれなりに安定していた。

同じような病に苦しむ人々の心の支えになろうと、電話相談を行ったり、メールで悩み相談を受けつけていたりした。

数々の病の原因となった母は、3度目の結婚をした。不倫相手と正式に籍を入れる略奪婚だった。

母は、遠野さんを含む4人の子供の育児放棄をしていた。第1子の遠野さんが下の3人の食事の世話などしていたにもかかわらず、遠野さんが母と絶縁した際、3人は母についていった。その弟妹たちとも20代後半で絶縁した。それでも「心から愛してやまない2匹の猫、仲間や友人たちに支えられているので一人ではない」と気を張って毎日を送った。

母親の顔も忘れかけた頃に、突然音信不通の弟から所属事務所経由で連絡が入る。

「母が自死をしたと……。再々婚した夫がガンで亡くなり、どうやらその後を追ったようなのです。それを聞いて、悲しみよりも強い憤りを感じました」

母は亡くなった夫が所有する梨畑の中で命を絶ったが、その姿を長男(遠野さんの弟)が発見したのだ。

「弟は母を見つけたせいで、その後吃音に悩むことになります。彼に自分の亡骸を発見させるなんて、なんて身勝手な行為をするのかと許せません。また、私が虐待を受けていたことを嘘だと思う人もいたのですが、『ほら、こういう人だから。虐待をしかねないでしょ』と証のようにも思えて。結局、母ではなく、女として生きた人で、後に残された子供のことなど考えもしない。つくづく母らしい最期です」

遠野さんの母方の曽祖母もまた自死をし、やはり息子が発見したと聞いていた。因縁めいたものを感じる、と遠野さんは言う。しかし、母は厳格な父親にコンプレックスを植え付けられるような育てられ方をしたが、虐待はされていない。虐待された人間は子どもに同じことをするなど負の連鎖を生むともいうが……。