20歳年下の男には食い逃げ。アプリに依存していた
遠野さんはアプリの自分のトップ画像は口元だけ出していたが、「なぎ」というニックネームを使った。根が生真面目な彼女は嘘をつくのが嫌なので、生年月日などのプロフィールも正直に登録していた。だから見る人が見れば、遠野さん本人とわかってしまう。女優と交際できるならと、邪な気持ちでアプローチしてきた男たちは少なくなかっただろう。
もちろん、遠野さんはそういう男性は「お断り」とばかりにスルーしたそうだが、男たちとの出会いや別れの顚末をブログやレギュラー番組でも赤裸々に公表。交際が破局しても、実にあっけらかんとしていた。およそ女優らしからぬエピソードに驚いてしまう。
「20歳も下の子と付き合って以来、年下としか付き合えなくなりました。でも、それだけ若いと行儀の悪い相手もいて、食事をした後に食い逃げをされたこともありました」
「相手がいい人だなと思ってもすぐ関係を持つのではなく、ちゃんと告白をしてからお付き合いをスタートして、その後にアプリを退会しました。一応筋を通したつもりで、相手と別れたらすぐにアプリに舞い戻り、また新たな相手を見つけての繰り返しです。今思うとマッチングアプリに完全に依存した“自傷行為”だったと思います」
破局した後、表面上は“自分は大丈夫”と何事もなかったかのように装っていた。しかし当然のことながら深く傷ついていたのだ。
ある男性とは、「LINEは必ず1日に1回はすることを約束したのに、相手が破った。それが耐えられなくて別れた」こともあった。
いい大人が一体何をしているのか? と非難するのは簡単だ。
しかし、いい大人になったとしても、幼少期に受けた虐待や育児放棄による愛情不足は、何をしても埋められないことがある。なぜなら、遠野さんの心の奥深くに、いつも小学生の青木秋美(本名)がひとりぼっちで立っている。
もちろん同じ不幸な境遇にいても、他者と継続的で深い関係性を築くことができる人もいる。そして、いつまでもこの飢餓状態から脱却できないわけでもない。
愛猫・愁くんとの生活で、満たされた毎日を送る
アプリの沼から脱却できたのは、男性ではない。愛猫・愁くんの存在だ。もともと動物が大好きで、劣悪な家庭環境にいたときでも、ペットたちに深い愛情を注いだ。
数年前に共に暮らした愛猫たちを次々に亡くし、ペットロスになったこともあり、しばらく飼っていなかった。しかし、遠野さん曰く「猫ではなく、人間に見えた」という猫の愁くんとの出会いで、また共同生活がはじまった。
そのおかげで毎日の生活に張りが出た。彼の最期をみとるまでは、自分は元気で働いて、面倒を見なくてはならないと責任感に燃えている。
愁くんに絶対的に必要とされている、という思いが彼女に生きる希望を与えている。母性が過剰なほど溢れでる遠野さんは、愁くんを本当の息子のように愛情を注ぐことで、安心感を得ている。自分はこういうふうに育てられなかったが、これは自分の“育て直し”だとも。