「都内の一等地に豪邸」の額くらいの食べ物を吐いた
「私は中学生の頃から食べ物を食べては吐き戻し続けました。その食べ物の総額は都内の一等地に豪邸を建てられるぐらいにのぼります」
と、衝撃の告白をしているのは女優の遠野なぎこさん(44)。
世間から贅沢病だとか甘えだとか批判を受けたこともあるが、それは摂食障害という、れっきとした精神の病だ。
摂食障害は、必要な量の食事が食べられない〈拒食〉、自分ではコントロールできずに食べすぎる〈過食〉、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまう〈過食嘔吐〉などに分類される。また、口の中で食べ物を噛み続けて吐く〈チューイング〉なども含まれるとされ、患者によって症状はさまざまだ。
遠野さんは、拒食、過食、過食嘔吐を繰り返した。症状が良くなる時もあるが揺り戻しもあり、40代半ばになった現在もなお拒食に苦しんでいる。
この病気は10代から20代の若者が罹患することが多く、一般的に女性がかかりやすいと言われる。日本で医療機関を受診している摂食障害の患者は1年間で21万〜24万人いるとされ、さらには治療が必要なのに受診していない、治療を中断した患者なども含めると40万人近くいると考えられる(※)。
※国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所調べ
太りたくないならば吐けばいいと囁いた母も摂食障害だった
この病の原因もいろいろだが、体重や体型へのこだわりから起因することが多い。遠野さんもそうで、6歳で子役デビューしているが、思春期になると少し体型がふくよかになったことがあった。このままでは仕事がこなくなるかもしれないと悩んだときに、彼女の母がこう囁いたそうだ。
「食べたら吐けばいいのよ」
そうか、吐けばいいのか。それならば、食べたいという欲求を満たしながら、吐けば食べたこともチャラにできると、幼いなりに理解したのだろう。しかし単純な行為に見えて、治療が難しい病につながる恐ろしいプロローグとなった。
「母もそうしていたので、スリムな体型を維持していました。さらには今の私と同様に摂食障害を患っていたのに、娘を同じ苦しみに引きずり込んだのです」
そう語る遠野さんは病と母との関係を綴った自著『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』(ブックマン社刊、2013年刊行)でも詳述しているが、その本の帯で“悪魔は母の顔をしていた”と表現している。