自分だけに虐待したのは、ライバル視していたから?

母は病を誘導しただけでなく、4人きょうだいの長女である遠野さんだけに虐待を続けた。血が出るまで殴る、蹴るといった肉体的な暴力、「お前は醜い!」という言葉と暴力の両面で遠野さんを攻め立てた。父親は大酒飲みで遠野さんと息子にも暴力をふるったが、母はどうして遠野さんだけを標的にしたのか?

「母は私を娘ではなく女というかライバルとして見ていたようです。母もどうやら女優になりたかったのですが、私を産んだことでその夢を叶えられなかった。だから私をにくたらしく思っていたようなのです」

遠野さんは、そんな環境にいながらも子役から順調に大人の女優へと成長。連続TVドラマ『未成年』(1995年、野島伸司脚本、TBS系)で重要な役を演じたことをきっかけに、のちにNHKの朝ドラ『すずらん』(1990年度、清水有生脚本)でも主役の座を射止めた。

女優の遠野凪子さん(1999年4月23日撮影)
写真提供=共同通信社
女優の遠野凪子さん(1999年4月23日撮影)

自分とは違って女優の道を駆け上っていく娘、どんどん美しくなっていく娘が目障りだとも思っていたのか。しかし、他人に遠野さんのことを聞かれれば、娘自慢をしていたらしいので、なんとも複雑な内面の持ち主だ。

「母は私を19歳で産んでいるので、当時まだ30代。エネルギーを持て余していたのでしょう。何かを成し遂げたいのに子供が次々と生まれてくるから何もできない。その吐け口もまた私への暴力へ繋がっていったのかもしれません」

しかも育児放棄をしていたので、幼い弟妹の面倒を見ていたのは長女の遠野さん。なんと、母の弟、つまり叔父の食事の世話もしていた。

「家庭は最悪だけど、きょうだいに決してひもじい思いをさせてはならない、その一心です。保育園の送り迎え、食事の世話など、母が投げ出した役目を引き受けました」

だが、学生、女優業、母親業で眠る暇もなくフル回転していたら反動は必ず来る。食べて吐いてという摂食障害もエスカレートする一方だ。

朝ドラヒロイン史上最も遊んだ女優の男性遍歴

その後、朝ドラのヒロインになったときは仕事が忙しすぎて、今度は男性依存の状態に陥ってしまう。その当時は家族と離れて狭いアパートに一人暮らしをしていた。一人で撮影現場に行って撮影が終われば電車でアパートに帰ってくる毎日。マネージャーも付いてこないヒロインらしからぬ寂しい境遇で、給料も月に13万円ほどと薄給だった。

「忙しいのに孤独だし、お金もないしと、とにかくストレスがかかりすぎました。だからそれを発散する相手として多くの男性を求めていたんです。一時期はふた回り上の年上男性と同棲して、彼が運転するベンツで現場に行くこともありました。それでも満たされなくて、違う男性と関係を持ったことも……。なかには現場のスタッフもいたんです」

しかも、すべて自分から声をかけて始まったというから驚きだ。声をかけられたほうはびっくりするが、「私はあと腐れないから、どう?」と遠野さんが言えば、据え膳を食わぬは恥と思ったか。しかも清楚を絵に描いたような容姿の朝ドラヒロインから迫られ、NOと言える男がどれほどいるだろうか。