東京ドーム並みの「日本一広いパン屋」

帯広にあるパン屋、満寿屋の旗艦店「麦音」の敷地面積は1万2000平方メートルだ。東京ドームのグラウンド面積(1万3000平方メートル)とほぼ等しい。一軒のパン屋としては日本一の敷地面積だろう。

麦音の外観
撮影=プレジデントオンライン編集部
日本一大きなパン屋「麦音」の外観。満寿屋の旗艦店で、ハイシーズンには観光バスも押し寄せる。

実際に足を運んでみると、あまりの広さにぐるっと目を回した後、ため息が出てしまう。敷地は広い。まず小麦の畑がある。そしてエゾリスがやってくる林がある。林にはシジュウカラなどの野鳥がやってきて鳴く。

地元のシンガーが歌える広い野外ステージがある。何十人もの家族連れがピクニックできる芝生の庭もある。芝生の庭では犬が走り回る。屋外テラスの客席は150席以上だ。パン屋というよりもピクニックランドもしくはグランピングの施設だ。

店内には常時、100種類以上のパンが並んでいる。いずれも焼きたてだから、パンのにおいとバターの香りであふれている。パンの価格は非常にリーズナブルだ。ねじりドーナツが125円、十勝あんバターは255円……。菓子パンは100円台、サンドウィッチや総菜パンは200円台から300円台まで。コーヒーは80円。東京の町のベーカリーよりも2割は安い。

店内にもイートインのスペースが数十席はある。イートインテーブルの上にはオーブントースターが載っていて、食パン、サンドイッチ、総菜パン、菓子パンを買った人たちは焼き直して食べていた。

100%十勝産小麦で焼いたもちもちの食パン

麦音でわたしを迎えてくれた満寿屋の社長、杉山雅則はオーブントースターを置いた理由を教えてくれた。

「うちのパンはすべて十勝産小麦を使って焼いています。十勝産小麦は食感がもちもちしていますから、リベイク(焼き直す)していただいたほうが外側がカリッとして、さらにおいしくなります」

そう言いながら、彼は同社製の食パン「みのりの恵み」を焼いて出してくれた。

みのりの恵みは1本(2斤)で1500円。牛乳、バター、生クリーム、マスカルポーネチーズが練り込んであるから、トーストしたパンにバターを付けずに、そのまま食べられる。牛乳、バター、マスカルポーネチーズは地元、十勝で育てられた牛から搾乳した牛乳で作ったもの。

もぐもぐと食べていたら、杉山は続いてパンを2個、オーブントースターに入れた。

白スパ(スパゲティ)のサンドとあんパンである。わたしは黙って食べた。サンドウィッチもあんパンもトースターで焼くと、香ばしいにおいがあたり一面に漂う。それは激しく食欲を刺激する。

満寿屋の人気商品の白スパサンド
撮影=プレジデントオンライン編集部
人気商品の白スパサンド。秘密のレシピは輝子さんが東京を出るときに教えてもらったという。