「痩せているほうが健康」は大間違いだ

間違い4 長生きのためにはダイエット

日本では相変わらず、猫も杓子も「ダイエット」に余念がありません。肉断ち、菜食、ローファット、糖質カットなどなど、「一体どれが正しいんだ」と言いたくなるような、減量法の情報が巷にあふれ、錯綜しています。

日本人がこれほどダイエットに熱心なのは、「スリムな体」こそ、美容だけでなく、「健康面でも理想」という“虚構”を信じ込んでいるからでしょう。そんな日本人の現状は、私には「狂気の沙汰」にしか思えません。というのも、寿命が最も長いのは「小太りの人」というのが、いまや世界の医学の常識だからです。そもそも「痩せているほうが健康」という、誤った常識を日本に根付かせた元凶は「特定健康診査」、いわゆる「メタボ健診」です。

メタボリックシンドローム(代謝異常症候群)とは、腹部の内臓のまわりに脂肪がたまると、動脈硬化や高血糖を誘発する物質が放出されたりして、脳卒中や心臓病などの生活習慣病の要因になるという病態。

そこで、生活習慣病を減らすため、メタボの学説に基づいて、日本でも08年からメタボ健診が始まりました。健保組合などの医療保険者は、40〜74歳の組合員にメタボ健診を受診させることが義務付けられました。腹囲とBMI(肥満度を示す体格指数)が一定基準を上回り、加えて血圧や血中脂肪値、血糖値などが「異常」とされると“メタボ”と診断され、食事の改善や運動を指導されるのは、ビジネスパーソンならご存じでしょう。ところが、政府肝煎りのこの「メタボ追放運動」が、健康に役立たないどころか、害悪にもなりかねないことがわかっているのです。

例えば、45~69歳の男性を対象とした調査では、脂肪摂取量が少ない人ほど脳卒中での死亡率、総死亡率も上昇することが明らかになりました。

ハワイの日系人は、日本人よりも長生きなことで知られていますが、広島県からの移民が多いことから、ハワイ日系人と広島県の男性の栄養状態を比べた調査もあります。1985年の栄養摂取量を見ると、脂肪は広島県が47.0グラムなのに対してハワイが70.1グラム、動物性たんぱく質は広島県が38.1グラムなのに対してハワイが51.3グラムと、ハワイが大幅に上回っていました。つまり、脂肪やたんぱく質を豊富に摂ったほうが、健康にはプラスなのです。

15カ国を対象としたFAO(国連食糧農業機関)の調査によれば、13年時点の国民の1日1人当たり摂取カロリーは、日本は北朝鮮、アフリカのルワンダに次いで3番目に少なかったのです。飢餓や貧困に苦しむ国と、世界有数の経済大国である日本の栄養摂取状況が同レベルというのは、異常としか言えません。

【図表】1日1人当たりの摂取カロリーワーストランキング

「日本人はもっと太れ!」というのが私の結論。食事では、栄養のバランスは大切ですが、もともと栄養不足なのだから、好きなものを好きなだけ食べても、さしたる問題はないでしょう。

新常識4 脂肪摂取量が少ないほど死亡率アップ