朝起きられない、仕事中に強い眠気に襲われる、落ち着かない……。そんな自覚がある人は睡眠時無呼吸症候群かもしれない。早稲田大学睡眠研究所所長で医師の西多昌規さんは「原因には肥満がよく挙げられるが、子どもや女性でも発症する可能性はある」という――。

※本稿は、西多昌規『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』(草思社)の一部を再編集したものです。

眠れなくて苦しんでいる男性
写真=iStock.com/Filmstax
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突然死のリスクが高い睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸停止を繰り返すことで、心身のさまざまな病気や、強い眠気など日常生活での問題を引き起こす病気です(註1)

睡眠時無呼吸症候群については、もっともよく見られる睡眠障害のひとつですので、医療機関からのホームページなどから、たくさんの情報を得ることができます。頻度や症状や健康リスクに関して、重要なポイントをかいつまんで以下に挙げます。

註1:睡眠時無呼吸症候群は閉塞性、中枢性に分類されるが、気道が狭くなることによって生じる閉塞性睡眠時無呼吸がほとんどを占める。この項目では、なじみのある睡眠時無呼吸症候群という用語を使うが、閉塞性睡眠時無呼吸のことを意味している。

・成人男性の約3~7%、女性の約2~5%。男性では40歳~50歳代が半数以上を占め、女性では閉経後に増加。300万人が睡眠時無呼吸症候群の治療を必要としている。

・いびき、日中の眠気や起床時の頭痛、夜間の頻尿など。

・高血圧、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなる。重症例では循環器系疾患発症のリスクが約5倍にもなる。

 ・重症では、治療せずにそのまま放置すると、8年の間に約4割が死亡する。突然死のリスクも高い。

・治療は、軽症ではダイエット、マウスピース、重症ではCPAP(持続陽圧呼吸療法)。寝ているときに鼻にマスクを装着し、空気を送り込んで気道の閉塞を防ぐことにより、睡眠時無呼吸を予防する治療法(註2)

一般社団法人日本呼吸器学会のHPを参考に作成)

註2:CPAPは、重症の睡眠時無呼吸症候群の治療法。「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字をとって、「CPAP(シーパップ)療法:経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれる。CPAPの原理は、寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に圧力をかけて空気を送り続けて気道を開かせておくというもの。CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれる。日本の医療保険制度では、CPAP装置を医療機関からレンタルして使用するのが一般的である。