日々の生活の質を高めるためにはどうしたらいいのか。カナダ出身で岡山県在住の著述家、スコット・アランさんは「パートナーや親、子供、友人、仕事仲間に対して感謝の心を持つことで感情、思考、振る舞い、さらに精神と肉体に大きな変化をもたらします」という――。

※本稿は、スコット・アラン(著)、弓場隆(訳)『GRATITUDE 毎日を好転させる感謝の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

抱擁する男女
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

感謝の心が精神と肉体に与える好影響

あらゆる状況でよいものを見つけるように努めれば、人生が喜びであふれていることに気づき、心がとても豊かになる。
ハロルド・クシュナー(アメリカの作家)

感謝の心は人生のすべての分野を改善する。これは誇張ではない。感謝の心は長期にわたる幸せな人生を実現する妙薬なのだ。

これまで、感謝の心が人生のさまざまな分野にどのように影響を与えるかを探ってきた。本稿では、感謝の心がとくに精神と肉体の健康をどのように増進するかを説明しよう。

1 ストレスを軽減し、不安をやわらげ、抑うつを防ぐ

私たちは自分の力ではどうにもならないことをたえず思い悩む。たとえば、過ぎ去った出来事を悔やんだり、これから起こるかもしれないことについて心配したりするのがそうだ。

しかし、感謝の心はこういう問題を解消し、ストレスをやわらげることができる。もちろん、感謝の心を持ったからといって、不安を完全に打ち消すことはできないかもしれないが、大きな役割を果たすことはたしかである。「これから起こるかもしれないこと」から「現在のこと」に意識を向かわせるからだ。その結果、気持ちにゆとりができて心の平和を得ることができる。

さらに、感謝の心は抑うつを防ぐことができる。抑うつの主な原因は、失敗や挫折にともなう絶望感だ。しかし、感謝の心はふだん受けている恩恵に気づくきっかけになるので、絶望感から立ち直るのに役立ち、抑うつを防いでくれる。

生理学的な観点から説明すると、感謝の心をはぐくむことは副交感神経の働きを活発にし、全身のリラクゼーションを促進し、それによってストレスと緊張をやわらげる。

2 考えすぎを防ぐ

挫折は不満や心配、ストレスを引き起こし、考えすぎの傾向を助長しやすい。考えすぎると、ネガティブな思いにとらわれて、身動きがとれなくなるおそれがある。

ドイツでの2019年の研究によると、感謝の心はネガティブ思考を抑え、考えすぎを防ぐことが指摘されている。この研究は、感謝の心をはぐくむことが疑念や恐怖、不安などの有害な思考を抑え、好ましくない結果を未然に防ぐことを証明している。