性格と健康にはどのような関係があるのか。大阪大学の佐藤眞一名誉教授は「性格は大きく分けて5つの要素で成り立っているが、そのなかでも『神経症性』という要素が強い人はストレスと抱えやすい死亡率が高まる傾向にある。一方で『誠実性』という要素が強い人は、死亡率が低いことが報告されている」という――。(第1回)
※本稿は、佐藤眞一『あなたのまわりの「高齢さん」の本』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。
なぜ高齢者は「都合の良いこと」ばかりを記憶しているのか
自分に都合のいいことばかり話す高齢さんが多いようです。そこには記憶の仕組みと老化がかかわっています。加齢は記憶の仕組みや行動にどう影響するのかを見ていきましょう。
高齢さんは無意識のうちに、自分にとって都合のよい情報を選んで記憶する傾向があります。例えば、「日曜日に息子の家族が訪ねてきて嬉しかった」「先週、趣味のコーラスのお仲間と会食をした」など、高齢さんに近況を尋ねると、よかったことだけを限定して話している印象はありませんか?
実際に起きた出来事は楽しかったことだけではなく、仮に「息子の家族が来たときに、孫のしつけのことを注意したら気まずくなった」「会食の日は電車を間違えて遅刻した」こともあったとして、高齢さんはこうしたネガティブな話はしません。わざと話さないのではなく、覚えていないからです。
この傾向は年齢に関係なくみられるようですが、若い世代はネガティブなことにも目が向き、高齢さんはポジティブなことに目が向きやすいといわれています。なぜかというと、若い世代はこれからの人生を生き抜くために、危険や恐れなどのネガティブな情報を集め、それに耐える力をつけようとしているからです。
その反面、高齢さんは、人生でネガティブなことも経験してきたので、少なくなった記憶の容量をポジティブなことに充てようとしていると思われます。年を取ると心身が衰えたり親しい人を亡くしたりすることで、ストレスになる出来事が増えていきます。残りの人生を幸福に生きるため、ポジティブで気持ちが前向きになる情報を重視したいのです。