医薬品と衛生雑貨の業界でそれまでになかった画期的なヒット商品を数多く生み出し、順調に売り上げを伸ばしてきた小林製薬ですが、あるとき年商100億円のブランドを失う危機に直面しました。最高責任者の小林さんはここで大きな決断を下します。その内容とは?(2022年1月24日レター)
私たちは日々仕事をするなかで、「A社とB社、どちらと取り引きすべきか」「今度出す新商品の値付けをいくらにするか」といったように、大なり小なり何らかの「決断」を迫られる機会が往々にしてあります。そしてときには一つの「決断」が、会社の収益を大きく左右したり、将来の成長を決めてしまうことすらあります。それゆえに大切な場面で「適切な決断」をすること、そしてその決断を「正しい結果」に導くことは、極めて重要です。そこで今回は、私自身の「決断」に関する考えをお話ししたいと思います。
小林製薬の経営を長年続けてきたなかで、最も重要で悩ましい決断を迫られたのは、1995年のことでした。当時私たちは米国の製薬会社、ブロックドラッグ社と合弁会社を設立し、同社の入れ歯洗浄剤「ポリデント」とその関連商品の販売を日本で行っていました。当時、同社の製品の売上高は年間100億円を超え、小林製薬の総売上の2割弱を占める重要な商材でした。しかしある日突然、ブロック社が私たちに合弁の解消を求めてきたのです。
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(構成=大越裕)

