※本稿は、近藤悦康『増補改訂版 日本一学生が集まる中小企業の秘密』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
「新卒採用」に対する誤った思い込みが多すぎる
新卒採用において、多くの社長や採用担当者が誤った思い込みをしているために失敗しているケースが見られます。
ここでは、それらの誤った思い込みをいくつか紹介しましょう。
誤った思い込み1 会社説明会では社長や社員が一方的にプレゼンをする
会社説明会では、学生たちは一見神妙に話を聞いているように見えるため、社長や採用担当者は、自分たちの説明に学生たちが真剣に耳を傾けていると思い込んで満足してしまいます。
しかし、会社説明会の終了後に、参加した学生たちにインタビューすると、ほとんどの学生たちは、今、聞いたばかりの会社のことを説明できません。確かにメモ帳やノートには、聞き取った情報が記録されていますが、頭には残っていないのです。
会社側が自社のことを伝えられたと錯覚しているのと同様に、学生たちもまたノートに書き取ったことで説明を理解したと錯覚しているのです。
なぜ、このようなことになっているのでしょうか。
それは学生たちが「受動的な脳」の状態で参加しているためです。その理由は、会社側が一方的な説明をしているからで、これでは学生たちの頭にも心にも何も残りません。
学生の脳を「能動的な脳」に切り替える
では、どうすれば「能動的な脳」で参加し、頭や心に御社のことを刻み込んでくれるのでしょうか。
それには、学生たちが自ら考えて行動しなければならない状況を用意する、つまり参加型のワークショップを行えばいいのです。そのために、座席も6人前後のグループ単位でディスカッションしやすいように島型に設置し、各テーブルの中央には会社に関する複数の資料を置いておきます。
「さて、これから20分間かけて、各テーブルに置かれた資料を読んで私たちの会社について理解してください。その後の15分間は、グループでディスカッションしながら、テーブルに用意された模造紙に、私たちの会社の強みや魅力についてまとめてください。そしてその成果を、5分間でプレゼンテーションしていただきます」
このように、学生たちが能動的に頭を働かせなくてはならない状況を用意することで、学生たちは頭をフル回転させて御社を理解しようとします。しかも、グループでわいわいがやがやとディスカッションしながらプレゼンの準備を行うという体験は、思いのほか楽しいものです。
その様子を見ると、社長や社員の方々は、これまでの会社説明会と打って変わった学生たちのイキイキとした表情に驚かれるはずです。
この結果、学生たちは御社をより深く理解し、しかも「楽しかった」「充実した時間を過ごした」「ユニークな説明会だった」などと口コミをしてくれるのです。しかも学生たちの頭や心には、しっかりと御社のことが刻み込まれているので、口コミにもその記憶が反映されるのです。

