「答えやすい質問」から入ればいい
初対面など、相手との接点がほとんどない状態で相手に質問をするときは、まずは相手が答えやすいようにハードルが低い質問から入りましょう。
名刺交換でオフィスの住所を見れば、「今日はオフィスからいらっしゃいましたか?」と聞くことができます。もしそうであれば、「電車は混んでいましたか?」と被せることができますよね。そして電車が混んでいたならば、「混んでいる電車はいつ乗っても大変ですよねえ」などと、自然なかたちでラリーを続けていくことができます。
名刺を見たときにちょっと珍しい姓だったら、「このお名前はどちらのご出身でいらっしゃいますか?」というのもよくある聞き方です。いずれにせよ、ポイントは相手がすぐに答えやすい質問をするということです。
ちなみに、僕がときどき使うのは、たとえばキヨミさんという名前の男性ならば、「僕の名前はマドカなのですが、同じ運命を辿っていますね」というふうに、性別を間違われやすいという自分との共通項を見つけてする質問です。ちょっと特殊な共通項で、「わたしたちは仲間ですね」と言いやすい話題だと、周囲の人も笑って打ち解けられるし、その場のアイスブレイクになるでしょう。
このように、誰も傷つかないような、ただの事実であるネタを質問のなかに入れると、初対面でも盛り上がることがあります。いずれにせよ、まずは答えやすい質問であることが大事なのです。
相手が知らないことを前提にして質問する
自分と相手との共通項を持ち出すには、事前に相手自身や、相手の会社についてリサーチしておくことも有効です。特に、相手が何かの大会で優勝したことがあったり、メディアの記事になったりした話題などを質問すると、たいてい「よく知っていますね!」と喜んでくれて、会話が弾みます。
仮に特筆した話題がなくとも、新聞などをリサーチして、相手がいる業界についての話題や関連する情報を持ちかけて、「こんな記事を見つけたのですがお読みになりましたか?」と聞くのも、相手に沿った質問になります。
このときの注意点は、相手がそれを知らないことを前提にすることです。
「こんな記事ありましたよね?」とダイレクトに言ってしまうと、相手に「いや知りませんね」と返されて、気まずくなることもありえます。でもそこは、聞き方次第。「お読みになりましたか?」と言って、読んでいたら盛り上がるし、知らなければ、じゃあ一緒に見ましょうかと会話を進めていくことができます。
もうひとつ、持ちかけるのはポジティブな情報にすること。
業界のネガティブな話題などは、基本的にお互いいい気分にならず、相手にとって触れてはいけない話題である可能性も高いからです。自分がする質問で、自ら災いを引き寄せないようにしましょう。
相手に興味がなくても会話は続けられる
自然なかたちで会話をはじめても、話がそのままつながっていく人と、途中からぎくしゃくしてしまう人の差があります。
その理由は、やはり「相手に興味を持てていない」からでしょう。それがいい悪いではなく、ただ興味がないので話がつながらない、という現象です。
そこでもし、話しているときに「なんだか話がつまらないな」「つながらないな」などと感じたら、自分は相手に興味を持てていないのだと、まずは正しく認識しましょう。そして、無理に興味を持とうとするのではなく、聞く内容をすべて周辺情報にしていけばいいのです。
具体的には、主語を「御社は」「あなたの部署は」「あなたの顧客は」「御社の製品は」などにして、いったんは安全な周辺情報だけで会話をつなげていくわけです。
こうして会話をつなげていくメリットは、その過程で何かが相手の琴線に触れて、熱を込めて話し出す瞬間が訪れるかもしれないということです。そうなれば、より相手に沿った質問ができるのでしめたものですよね。熱を込めて話し出す瞬間が訪れなければ、それはそれで無難に会話を終えることができます。
相手に興味を持てないのなら、興味を持てていないことを正しく認識し、まずは当たり障りのないところから入っていく。世の中にはあなたに合わない人は必ずいるわけですから、会話で打率10割なんて求めなくてもいいのです。
お互いが「何を求めるのか」見通しを共有しておく
また、真面目な人に多いのですが、相手の話をうんうんと聞きすぎてしまい、結局自分が肝心な質問をできないことがあります。こうした場合は、会話の前に簡単なルール(見通し)を決めておくことで、その場をうまくコントロールすることができます。
面談の最後の20分は質問タイムにさせてほしいと伝えてもいいし、簡単なタイムスケジュールを最初に共有したり、アジェンダを明確にしてお互いの合意事項にしたりしておくといいでしょう。
それによって、その場の雰囲気や相手のリズムで流れていきそうな場面でも、「最初にお伝えしましたように」とひとこと挟んで、お互いの合意事項に無理なく戻ることができます。ビジネス会話では、限られた時間のなかで、お互いが「何を求めるのか」をしっかり握っておくことが大切なのです。
ちなみに、時間に厳密でない会話の典型が、飲み会や以前の職場の同窓会のような場だと思います。特に同窓会的な場については、僕は個人的に、過去に同じ職場にいたという事実以外の興味は、お互いにあまり持てないのではないかなと感じることがあります。
「あのときはよかったね」「きつかったね」と過去の話を言い合うのは楽だし、そもそも同窓会とはそういうものですから、なかなか「未来につながる質問」は生まれにくい。そんな場を、僕はときどき居心地悪く感じることがあるのです。
一方、限られた時間内の会話でお互いに「何を求めるのか」にフォーカスすれば、未来に向けての質問につながりやすくなります。その意味で僕は、「質問力」が高い人は、話している人がお互いに、「これからどうなりたい?」「どんな未来にしたい?」「どうポジティブに変わりたい?」という気持ちになれるような質問をする人だと見ています。
ともに未来をつくる材料集めのための質問が、いちばんクオリティが高い質問だと思うのです。


