「嫌なら来るな」と言っていたあの頃
ドン、ドン、ドン、ドンキ〜。賑やかなテーマソングが響きわたり、夜中でも煌々と明るい店内。天井付近までうずたかく積まれた商品を、若者たちがキャッキャと吟味している――。かつてのドン・キホーテ(以下、ドンキ)は「深夜の暇つぶし」「魔境」などとも揶揄され、大人世代には近寄り難い雰囲気がありました。
現在は、かなり様子が変わっています。繁華街の店舗は若い世代やビジネスパーソン、インバウンドのお客様で賑わっています。他方、住宅街の店舗は生活用品や生鮮食料品を数多く取り揃え、主婦や高齢者のお客様にも利用していただいています。久々にドンキの店内に入ったお客様には「ずいぶん様子が変わったね」と驚かれます。
たしかに20年くらい前まではドンキはちょっとダークなイメージがありましたね。独特の雰囲気があり、店舗側も「嫌なら来なくていいよ」なんて思いながら、我が道を行く店舗づくりをしている節もありました。
大きな転機となったのは、長崎屋(2007年)とユニー(2019年)の買収でした。両社はもともと地域密着型の大型店舗を全国に展開する総合スーパーだったものを、「MEGAドン・キホーテ」という新業態に変えたのです。生鮮食料品を扱うようになったのは、長崎屋やユニーのノウハウが生かせたからです。
かつてのドンキは、300坪ほどの店舗が中心でした。そこに5万アイテムを並べたいがゆえに上方向に積み上げる「圧縮陳列」になっていました。これも鬱屈とした「魔境」と呼ばれる所以の一つだったかもしれません。しかし、今は買い場面積(当社ではお客様目線を徹底するため、売り場は「買い場」と呼びます)が広がり、開放的で明るい雰囲気になりました。
というのが、ハード面からいえることですが、本当の理由はソフト面、若い社員や従業員たちの「試行錯誤」にありました。現在の経営幹部は社歴25年前後の人たちが中心です。彼らが入社してすぐに配属されたのが、いわゆる「魔境」といわれていた当時の店舗でした。
創業以来の当社の組織マネジメントの特徴に「権限委譲」があります。上意下達の中央集権型ではなく「お客様が常に正しく、賢い」という信念のもと、現場担当者の意見や判断が、店づくりや品揃えに最大限反映されるシステムになっています。現場スタッフに権限を与えて、上司から口出しをすることはほぼありません。当社は1兆6000億円くらいの仕入れをしていますが、基本的に稟議もありません。社長の意見は誰も聞いてくれません。ちょっと変わってる会社ですよね。
当時、若手スタッフとして現場を仕切っていた彼らは、最前線で必死に考え、試行錯誤を重ねていました。「どんな店舗にどんな商品を揃えたら、お客様に喜んでいただけるのか?」
「これまでのように“わかるお客様だけ来てくれたらいい”というスタンスで商売を続けていいのだろうか⁉」
そうした現場での議論や挑戦の結果が、今日の賑わいに結実しているのだと思います。
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