※本稿は、村上伸治監修『心のお医者さんに聞いてみよう 大人の愛着障害 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)の一部を再編集したものです。
親にじゅうぶん甘えられたという人は実はほとんどいない
愛着形成がしっかりできている人は精神的に強靭です。人生の困難やストレスに直面してもへこたれず、たくましく生きていくことができます。
たとえば小さいうちに親や養育者にたっぷり甘え、「もうじゅうぶん」と思うほど甘え尽くした子どもには強固な愛着が形成されます。愛着がしっかり形成されれば、子どもは自然に親から離れ、なにも言われなくても自分の人生を歩み始めます。
ところが、人間は大きくなるとだんだん素直に甘えられなくなってきます。甘え足りないのに「もう大きいんだから」などと言われて愛着サイクルを断ち切られてしまった子は、愛着形成が不十分なまま大人になっていきます。
実際には、思う存分甘えきり、揺るぎない愛着形成ができている人など世のなかにほとんどいません。大半は中途半端な愛着形成のまま大人になっているのが実情です。
だからこそ、みんなそこそこの自己肯定感と他者信頼感はあるものの、強いストレスや逆境に出合うと簡単に潰れてしまうのでしょう。
あなた自身に問題があるわけではない
愛着の問題を、童話「三匹の子豚」にたとえてみましょう。
普通の人は木造の家に住んでいます。ある程度の雨風には耐えられますが、強い台風や地震がくれば家は崩れてしまいます。
治療やケアが必要な人は、藁ぶきの家レベルです。一方、逆境にも負けないような人は、強いレンガ造りの家に住んでいます。
安心感や自己肯定感が乏しいと感じる人は、自分自身に問題があるのではなく「家の構造が弱い」と考えてみてください。原因は家の構造にあるのですから、補強工事で強化することはじゅうぶん可能です。専門家の知見を活用することをお勧めします。
藁ぶきの家の人はもちろん、木造の家に住んでいる人も、もっとしっかりした家=自分にしたいのであれば、レンガ造りの家を目指して補強・耐震工事をしていきましょう。