内科医・作家 おおたわ史絵
東京下町出身。東京女子医科大学卒業後、大学病院、総合病院を経て下町の医師の道を選ぶ。日常の診療のほかに、障がい者医療や山岳医療ボランティアにも携わる。テレビ情報番組「スッキリ!!」ほか、「ホンマでっか!? TV」などにレギュラー出演中。ラジオや雑誌などでも活躍中。著書にベストセラーとなった『女医の花道!』ほか、『犬への「愛」は「血圧」を下げる』『今日のうんこ』など多数。
毎日、何を食べようかと考えるのは最高の楽しみです。元肥満児の血がそうさせるのかしら。
そう、私は子どもの頃、肥満児だったんです。モテないしダサいし徒競走は遅いって言われるし。中学生にもなると、みんなバレンタインデーにチョコレートをあげたりラブレターを送ったりしているでしょ。中3のとき、そんな同級生たちを横目で見ながら、「このままじゃ私は不幸だ!」と思って、突然ダイエットを始めたんです。1年で12、3キロ痩せて、世界が変わりました。
まず男子がやさしくなる。混雑時の通学電車でも、サラリーマンのおじさんが「カバン持ってあげようか」と声をかけてくれる。でも、そういう親切を受けても、「太っていたときは誰もそんなやさしいこと言ってくれなかったじゃないか!」と思うわけです。このとき以来、私は人のきれい事を信じません。「内面が大事だなんて嘘ばっかり。世の中こんなもんだ」と悟りました(笑)。
とはいえ、当時の「ダイエットして普通の人並みになった」つらい苦労話は、患者さんに食生活習慣の指導をするときの説得材料になります。糖尿病にしても痛風にしても高血圧にしても、絶対食事を意識しますから。私は今も好きなだけ食べているとすぐに太る。だから大好きなラーメンも月2回程度です。
基本的に自分にも患者さんにも、あれを食べちゃダメ、これもダメといった制限はしません。決まり事をつくると逆にストレスになって、いい結果を及ぼさないことがあるので。その代わり、「自分の体の声を聴きましょう」とよく言います。胃が重いなら油物はやめて野菜の鍋にしておこうとか、体がむくんでいたら塩分の少ないものを食べておこうとか。自分のその時々の体に敏感になることは必要だと思いますね。
体ほど変えられるものはないんですよ。たとえば、お金が欲しいからといって働いても、いきなりお金持ちになることはありません。偉くなりたいと思って努力したところで、必ずなれるものでもない。ましてや恋愛で、どんなに自分が努力したって、振り向いてくれない人は振り向いてくれないわけです。だけど、体だけは別。動きを変えたり食事を変えたりすることで、必ず変わってきます。
さらに、早食いはとにかく万病のもとなので、ゆっくり噛んでゆっくり食べることをお勧めします。噛むことでどんどん脳の中も活性化していきますし、認知症予防になることもわかっています。好きな人とご飯を食べたり、1人のときはカウンターで料理人さんとしゃべったり。楽しくゆっくりおいしい料理を味わえば、食べすぎることもありませんから。