作家 白取春彦

1954年、青森県生まれ。ベルリン自由大学で哲学、宗教、文学を学ぶ。85 年に帰国後、文筆業に従事。哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評がある。著書の『超訳 ニーチェの言葉』はミリオンセラーとなった。ほかに『今知りたい世界四大宗教の常識』『図解「西洋哲学」と「東洋哲学」』『はじめて知る仏教』『仏教「超」入門』『哲学の実践ノート』『この一冊で「哲学」がわかる!』『ビジネスマンのための「聖書」入門』『超訳 聖書の言葉』『勉学術』『独学術』『超訳 仏陀の言葉』など多数。現在、週1回、青森市内の大学で哲学「人間と倫理」を教える。


 

いまは青森の実家で仕事をして、出版の打ち合わせなどでときどき上京するというスタイルです。以前は東京に住んでいたのですが、父親の介護のために帰郷しました。『超訳 ニーチェの言葉』もこちらで書きました。都心と比べると空気の中に不純物がないですね。澄み切っている。青森の食べ物でとくにおいしいと思うのはナマコ。海の味がするんですよ。歯ごたえもいい。本物を食べているという感じがする。食べ物には恵まれていますね。といって、青森の生活は捨てがたいかというと、そうでもない。執着がほとんどないんですよ。

ふだんの食生活は質素なほうだと思います。ステーキとじゃがいも、あるいはスパゲッティがあればそれでいい。朝は濃厚な生のメロンジュース。それだけです。昼は外食なので、ハンバーグなどが多いですね。夜は適当にすませています。嫌いなものはありません。ただ、食べる量が少ないので、ご飯もほんのちょっとでいいんです。

僕は哲学を勉強するためにドイツに長く住んでいたけれども、ホテルの朝食にしてもメニューはいつも同じですよ。パンとバター、ジャム、ハム、ソーセージ、好みのボイル時間を指定できるゆで卵、あとは好みの飲み物だけです。フランス人も基本、クロワッサンとカフェオレでしょう。その日によって朝、パンにしたり、ご飯にしたりして、バラエティーが豊富なのは日本人だけですよ。

その割には食べ方を知らない。たとえば、肉まんにしてもそうでしょう。本来、辛子をぬって醤油につけて食べるのに、コンビニなどで売っている菓子パン感覚で食べられるものを肉まんだと思っている。好みの問題なのでなんともいえないけれど、違和感がありますね。

30代の頃はお酒をものすごく飲んでいました。いまでもバーボンのボトルを1本は空けられますが、自宅では一滴のアルコールも口にしません。家が職場なので、飲んじゃうと仕事ができなくなっちゃうんですよ。飲むときは外で。仕事が詰まっているときは月に1、2回ですね。サラリーマンが毎晩、居酒屋や家で飲んだりしているのがちっとも理解できない(笑)。

今度、小説を書きます。40代の初めにペンネームで官能小説を、本名で普通の小説を書いていたので、その流れですね。官能小説を本名で刊行したあとは、ニーチェをテーマにした作品を書く予定です。当然、食べ物に関しての記述も出てくる。彼は年金生活者だったことからお金に限りがあったので、朝と夜は自分の部屋で食べ、昼はホテルでランチをとっていました。酒もタバコもやりません。当時のファッションから政治、経済、さらには鉄道網まで調べないといけないので大変です。