言語外のメッセージが受け取れない

Bさんは自分の特性をネットで調べ、発達障害の1つである“自閉スペクトラム症(ASD)”に行きつきました。そして、「自分は自閉スペクトラム症ではないか」と筆者に相談にきたのですが、その後受診した精神科では「その傾向がある」と言われました。

診察する男性医師
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自閉スペクトラム症の特徴としては、言語以外のメッセージであるメタメッセージ(表情や声色、ジェスチャーなど)が受け取れない、固執傾向(こだわりが強い)、相手の立場に立つといった想像力が働きにくいなどがあります。言葉によるコミュニケーションは、言葉自体によって20%、メタメッセージによって80%伝えられるといわれており、メタメッセージの読み取りが上手くいかないと“空気が読めない”ということになってしまいます。

近年、Bさんのように社会に出て初めて、この障害(グレーゾーンを含む)が自分にあることが分かったという人が増えているのです。このほか、管理職になった途端に職場環境への適応が難しくなるケース、異動により環境への適応が難しくなるケースも見られます。

「部下がグレーゾーンかも?」と思ったら

発達障害に関して、カウンセラーである筆者のところに相談にくる人は、本人が「自分は発達障害かもしれない」と思っているパターンのほか、「部下が発達障害かもしれない」と部下の発達障害を疑う上司も少なくありません。後者の場合、上司は、部下の仕事ぶりや言動に悩まされていることが多く、すでに両者の人間関係に問題を抱えている場合がほとんどです。

筆者は、上司のメンタルケアなども視野に入れながら、どのような言動から部下の発達障害を疑うに至ったのか、そのエピソードを丁寧に聞くようにしています。

それと同時に、部下を発達障害と決めつけているような上司に対しては、疾病性(診断名)にこだわるのではなく、事例性(仕事に出ている影響)で検討していくよう促すことを心がけています。そのうえで、「どのようなことで具体的に困っているのか」「上司や同僚でフォローできそうなことはあるか」について話し合うようにしています。

当然ですが、上司の話だけで部下が発達障害か否かをジャッジすることは不可能で、そもそもASDとADHD(注意欠如・多動症)の診断基準ではカテゴリーが重なり合っていたりすることもあるため、医学的な分類が無意味というケースもあります。