事例3:曖昧な指示が理解できない
Eさん(男性20代)の所属する部署は忙しく、いろいろな指示が飛び交っているようなところです。「あの件、まとめておいて」とか「さっきの件は、適当に処理しておいて」など曖昧な言葉がよく飛び交っていますが、Eさんにとっては、「あの件」とはなにを指しているのか、「適当に処理」の適当とはどの程度なのかなどを、想像するのが難しいようです。
指示してきた人に聞くこともありましたが、「そんなこと自分で考えてよ!」などという言葉がかえってくることが多く、分からないまま着手していました。その結果、指示された内容と違う期待外れの仕事しかできず、叱責される機会が多かったようです。
[どのようにサポートしていくか]
Eさんは、イマジネーションやコミュニケーションが得意ではないといえます。分量や納期が不明確な仕事は、イメージがしにくいのでしょう。そもそもEさんのようなタイプは、自分で想像しながら仕事を進めていかなければいけない部署では、環境への適応が難しい場合が多いです。部署を変えてもらうことも1つの方法となりますが、ある程度のルールがあればマニュアル化しておく、指示する人には具体的に伝えるようにしてもらうなど、環境調整も必要となります。
このように、部下の特異な言動から発達障害を疑うよりも、まずは事例性に即したサポート案を試してみることが重要です。それでも難しいようであれば、遅刻の回数や叱責される内容などの客観的な事実から、受診やカウンセリングを勧めるのも方法の1つです。さらに詳しい事例や対応方法は、『発達障害グレーゾーンの部下たち』の3章以降で紹介しています。