睡眠の質を高めるために、摂取を避けるべきものは何か。日本睡眠学会理事で医師の櫻井武さんは「カフェインの覚醒作用は4時間といわれ、摂取すると眠りを促すアデノシンが脳のなかで働く過程を阻害する。日ごろ、眠れなくて困っている人は、夕方以降はコーヒーやお茶を控えるに越したことはない。また夕食後にデザートを食べるときは、チョコレートやチョコレート菓子を避けたほうが、カフェインの影響を受けにくい」という――。

※本稿は、櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

夕暮れの街を眺めながらコーヒーを飲む
写真=iStock.com/Bevan Goldswain
※写真はイメージです

どうしてカフェインをとると眠れなくなるのか?

「カフェインをとると、眠れなくなる」ことは有名な話です。カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶、チョコレートにも含まれていて、なかでも玉露には、コーヒーよりも多いカフェインが含まれています。では、なぜカフェインが眠りを妨げるのでしょうか?

そこには、「アデノシン」という物質の特性が深く関わっています。アデノシンは、脳のなかで眠りを促す睡眠物質の1つです。あらゆる細胞にとってのエネルギー源で生命活動の燃料といわれる「ATP」が分解されると出てくる物質です。

脳は、全身の組織や臓器のなかでも、もっともエネルギーを消費します。とりわけ起きている間は絶えず使われているため、ATPを大量に消費して、その分解物であるアデノシンが蓄積されていきます。このアデノシンを、脳の「側坐核そくざかく」にある、アデノシンの受容体をもつ神経細胞が受け取ると、眠気が誘導されます。

わかりやすくいうと、アデノシンが「鍵」ならば、それに合った「鍵穴」をもつ神経細胞があり、鍵穴(神経細胞)に鍵(アデノシン)が差し込まれることで眠気が起こるのです。