安易に診断名と結びつけるのは禁物

ただ、発達障害についてネットなどで調べ、少し知識がある上司は、部下の特異な言動を取り上げて「こんなことがあったのでADHDだと思う」とか「記憶力だけは抜群なのでASDだと思う」など、安易に診断名と結びつけるような発言も少なくありません。さらに、この考えを本人に伝えたという上司もいましたが、これはもってのほかです。不用意に本人を傷つける恐れがあるだけでなく、ハラスメントに該当する可能性も高いといえます。

では、部下の発達障害を疑うエピソードと、事例性からサポート方法を検討する例をいくつか紹介します。

事例2:ほぼ毎回、会議に遅刻してくる新人

新人のDさん(女性20代)は、会議で使用する資料を配布したり、議事録を作成する役割を任されています。しかし、必ずといっていいほど、10分程度遅刻します。上司や先輩から注意されるたびに謝罪の言葉を述べ、次回からは気をつけますと言いますが、直りません。

[どのようにサポートしていくか]
舟木彩乃『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)
舟木彩乃『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)

Dさんのような人は、段取りなどが苦手で、時間感覚を保ちながら自分の行動を管理していくことが不得意な場合があります。一度、会議前の資料準備から会議に参加するまで具体的にどのような準備が必要で、どのくらい前から着手すれば間に合うのかを一緒にシミュレーションしてみると良いでしょう。

シミュレーションによって、Dさんが会議前からの流れやコツを把握し、1人でできるようになればいったんはゴールとなります。何度シミュレーションしても1人で実施することが難しい場合や、本人が苦痛に感じているようであれば、上司から事情を詳しくヒアリングしたり、場合によってはカウンセリングなどを勧めてみると良いでしょう。

繰り返しになりますが、ヒアリングの際に「発達障害かもしれないから……」などという声がけは絶対にしてはいけません。