「実態」を知らないから余計に不安になる

公的年金の長所は生きている限り受け取れることですが、どんな働き方をしてきたかで、老後の何十年間もの年金受取額の水準が決まってしまう怖さもあります。夫婦ともに会社員や公務員などの勤め人だった「ダブル厚生年金」世帯は最も余裕がありますが、夫が勤め人で妻が専業主婦の「モデル世帯」だとそれより厳しくなり、自営業者やフリーランスなど、年金が「国民年金のみ」の場合は特に厳しくなります。この場合はiDeCoや国民年金基金、民間の個人年金保険を使って、自分で対策を打つのが大事です。

そのためにはまず、図表1のような日本の年金の構造や、自分がいくら年金をもらえるのかを知らなければなりません。年金の仕組みは厚生労働省のサイトの漫画「いっしょに検証! 公的年金」で学ぶことも可能です(我々のような金融記者もこの漫画は結構参考にしています)。24年に亡くなった経済コラムニストの大江英樹さんは、私が編集者を務めた『定年3.0』(日経BP)という本の中で、「老後が不安だという人は多いが、そういう人は案外自分の年金額を知らないことが多い」と書かれていました。実態を知らないから不安が増す、ということはありそうです。

まずは毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を見る

自分の年金受取額を知るには、毎年誕生月に送付されてくる「ねんきん定期便」を見るのが一番手軽です。35歳、45歳、59歳という節目の年には分厚い封書で、それ以外の年にはハガキで届きます。このハガキは図表2のように、年齢によって見るべきポイントが違ってきます。

50歳未満の人は「これまでの加入実績に応じた年金額(年額)」の、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金の合計の欄を見ます。まだあまり保険料が積み上がっておらず、その段階で「今受け取るとしたらいくらか」という仮の数字なので、全員がかなりの少額でしょう。特に若い人は驚くようですが、今後長く働いて保険料を納め続ければ、この数字は増えていきます。50歳以上の人は「老齢年金の種類と見込額(年額)」の欄を見ますが、こちらは現在の加入状況が60歳まで継続したと仮定した場合の見込み額で、年齢が近くなったこともあって大分リアルな額になってきます。

もう1つ、パソコンやスマホで日本年金機構の「ねんきんネット」にアクセスして調べる手もあります。ねんきんネットに入るには専用IDを取得する必要がありますが(方法はねんきん定期便に詳しく書いてある)、今の年金予想額だけでなく、働き方や受給開始時期を変えると年金額がどう変わるのか、様々な試算ができるのでおすすめです。

最後に、民間保険で年金額を増やす方法を紹介しましょう。