※本稿は、菱田雅生、大口克人『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』(日経BP)を再編集したものです。
「老後は年金だけで楽々暮らせる」はウソである
老後は「年金で生活する」 OR 「貯金で生活する」
テレビのニュースではしばしば「年金の受取額が低い」という話題を取り上げており、毎回、年金生活者が登場して「こんな額ではとても生活できない」と訴えています。確かに、国民年金の満額でも月6万8000円(2024年度)という額は、毎日の生活に十分だとは言えません。
それに、若い頃には将来年金をもらう時のことなど考えもせずに働き続け、ある時ハタと「年金ってどうなってたんだっけ?」と気付くものですよね(私自身がそうでした)。特に今の年金世代は戦後の復興を支えた世代ですから、生き抜くのに精一杯でお金について満足に学ぶ機会もなかったでしょう。「それにしても、先輩方はちょっと脇が甘すぎたのではないですか」と私は思います。だって国は一度も「老後は年金だけで楽々暮らせます」なんて言ってないからです。結論を先に言ってしまえば、老後はあくまで現役時代の蓄えで生活するのが基本で、年金はその補助にすぎないのです。
国が用意している「年金の受取額を増やす仕組み」
一方で国もその点を放置しているわけではなく、年金の受取額を増やす仕組みをいろいろ用意しています。代表的なのが「繰り下げ受給」です(次の項で詳しく説明します)。また国民年金の加入月が40年(480カ月)に達しておらず、満額をもらえない場合には「任意加入制度」を使用し、60歳を超えても65歳まで国民年金に加入して保険料を納めることができます。繰り上げ受給をしている人や厚生年金に加入している人は使えませんが、年金の未納期間、未加入期間がある人、そもそも加入期間が最低条件の10年に達していないので国民年金を受け取れない人は、利用価値があります。お住まいの自治体の国民年金担当窓口に相談してみましょう。
また「付加年金」という制度もあり、国民年金の保険料に毎月400円の付加保険料を上乗せして納めると、亡くなるまでの間ずっと「付加保険料を納めた月数×200円」が受け取れます。先ほどの任意加入に加え、付加保険料を納めることも可能です。もっと言えば、この他に国民年金のみの人でも年金を厚くできるiDeCo(個人型の確定拠出年金)や国民年金基金という税優遇の付いた制度もあるのです。現状を早く知り、打てるうちに対策を打てば年金額を増やすことは可能だと言えます。