筆者が「繰り下げ受給」にチャレンジする理由

私自身は、これまでの項で解説したように「そもそも年金はあてにならない」とも「いずれ破綻する」とも思っていません。さらに祖父・祖母の寿命から「どうやら長生き家系のようだ」と見ており、5年で42%も安全確実に増やせる運用法が他にないのも知っていますので、繰り下げ受給にチャレンジしてみようと決めています。ただ、公的年金は最初に「75歳まで、もらわずに頑張ります!」などと決めて申告する必要はなく、受け取りたくなった時に自分で請求のアクションを起こすだけです。なのでその時々の収入と健康の状態を考えながら、苦しくなってきた辺りで自然体で受け取り始めようと思っています(できれば70歳くらいまで延ばしたいところですが……)。

次に、どの年金をどう繰り下げるかです。繰り下げの場合は国民年金と厚生年金はそれぞれ別に扱えます(繰り上げの場合は両方がセット)。つまり「65歳になったら厚生年金をもらい始めて生活費にし、国民年金は70歳まで我慢して増やす」とか、「国民年金は68歳まで、厚生年金は73歳まで繰り下げる」など、自分の条件に合わせて調整でき、意外と自由度が高いのです。また、「夫の年金は65歳でもらい始めるが、長生きしそうな妻の年金は極力長く繰り下げて増やす」という案も現実的だと思います。

手軽に年金額を試算できる「おすすめツール」

この辺は国が用意しているシミュレーションツールを使って、受取額をあれこれ試算しながら決めるといいでしょう。前述の日本年金機構「ねんきんネット」にアクセスすれば、働き方を変えると年金額がどう変わるのか、国民年金・厚生年金のそれぞれを何歳まで繰り上げ・繰り下げすると年金額がどう変わるのか、自由自在に試算できます。

もう1つ、厚生労働省が提供している「公的年金シミュレーター」もおすすめです。ねんきん定期便のハガキに印刷されているQRコードをスマホのカメラで読み取り、生年月日を入れるだけで、新たにIDを取得したり基礎年金番号を入力したりせずに手軽に年金額の試算ができます。

図表4のように構成はシンプルで、今後の年収、何歳まで働くか、何歳から受け取るかを3つのスライドバーで動かして設定すると、それに応じてグラフが変わるなど、直感的に操作できるのが長所です。また試算結果がサーバー上やスマホ上には残らず、ブラウザを閉じれば消えてしまうのも安心な点です。

この画面の下には「これまでの年金加入期間」を確認できる項目や、働き方・暮らし方を細かく変えて試せる項目もあります。もう1つ便利なのが「年金受給開始時の税・社会保険料額の試算」もできる点です。ある年の東京都新宿区の参考例なので自分の場合と必ずしも一致しませんが、これが簡単に試算できるツールは現状ほとんどありません。ですので「年金から実際はどのくらい引かれるのか」を知るには極めて便利だと言えます。

(熟練金融記者 大口克人)

【一言まとめ】
どちらが本当に得かは亡くなるまで分からない。個人的には長生きに備え、自然体で繰り下げするつもり。
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