大谷翔平選手が51本塁打51盗塁に記録を伸ばし、世界初の"50-50"を達成した。経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥さんは「2度のMVPや本塁打王を獲得し、挙げている数字は素晴らしいものですが、大谷本人はそれよりも野球の技術をどこまで高めることができるか、野球人としてどれだけ成長しているかを大切にしている」という――。

※本稿は、桑原晃弥『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

大谷の50号 米大リーグ・大谷
写真=共同通信社
米大リーグ、マーリンズ戦の7回、50号2ランを放つドジャース・大谷翔平。メジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」に到達した=2024年9月19日、マイアミ
大谷翔平の名言1
バッターは3割打ってすごいと言われますけど、やっぱり一度のミスもなく打率10割の時に100%と思えるんじゃないですかね 『道ひらく、海わたる
佐々木亨『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)
佐々木亨『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)

メジャーリーグで「マダックスを達成する」というのは、投手が100球未満で9回以上を投げ切り、相手打線を完封することを意味します。精密機械のようなコントロールを武器にこの偉業を13回も達成、通算355勝を記録した大投手グレッグ・マダックスにちなんでこう呼ばれています。

チームにとっても、投手にとってもまさに理想的なピッチングと言えますが、大谷翔平がピッチャーとして理想としているのは「27球のピッチングと81球のピッチングのバランスを併せ持っている」というものです。

27球のピッチングというのは、1試合をすべて初球で打ち取って27球で終わらせる、究極の「打たせて取る」ピッチングです。もう1つの81球のピッチングというのは、全員を3球三振で打ち取るというものです。

どちらも理想的に見えますが、大谷はどちらかではなく、どっちもできるのが理想と考えています。27球で終わらせようとすると、全部の球をバットに当てさせなければならないため、場合によってはその一打が風に乗ってホームランになるかもしれません。

そうならないためには序盤のリスクの少ない場面では球数を多く費やさないように27球のピッチングをして、得点圏にランナーを背負う場面や終盤の1点を争うような場面では、間違っても一発を打たれないように、3球三振に打ち取るような81球のピッチングが必要になってきます。

この両方を使い分けることができてこそ、試合を支配できるというのが大谷の考え方であり、大谷の理想とする姿なのです。

そしてもう1つのバッティングに関しては、こんな目標を口にしています。

「自分のバッティングがどれぐらいのパーセンテージまで来ているのかがわからないし、何を持って100%と思えるのかもわからない。ただ、バッターは3割打ってすごいと言われますけど、やっぱり一度のミスもなく打率10割の時に100%と思えるんじゃないですかね」

とてつもない目標ですし、投手という相手がいる以上、すべての試合で「打率10割」を達成できるとは思えませんが、そんなあり得ない目標を追い求めるからこそ大谷は常に変わることができるし、絶えず進化していくことができるとも言えます。人がどこまでいけるかは「目線の高さ」で決まるものなのです。

ワンポイント:目標は限りなく高く掲げろ。目標の高さで何ができるかが決まってくる。