赤字額最大は新潟「羽越本線村上~鶴岡間」

上位3線区は羽越うえつ本線村上~鶴岡間の49億円、奥羽本線東能代~大館おおだて間の32億円、羽越本線酒田~羽後本荘ほんじょう間の27億円だが、羽越本線と奥羽本線は在来線特急や貨物列車が走る重要幹線であり、廃止という選択肢はない。世間がイメージする「赤字ローカル線」だけではないのが、この問題の難しさを物語っている。

JR発足から30余年を経て、ローカル線の利用が大幅に減少した要因のひとつは人口減少だ。

人口増減には自然増減と社会増減がある。出生率の低下による自然減も問題だが、東北では首都圏への転出による社会減が深刻だ。東北全体で見ると中心都市である仙台市への転出が多いが、宮城県から首都圏への転出がこれを上回る。とくに女性の転出が多いのが特徴で、その理由に「やりたい仕事が見つからない」「年収が少ない」「若者が楽しめる場所が少ない」などが挙げられている。

脇川の漁村を行く羽越本線の貨物列車
写真=時事通信フォト
脇川の漁村を行く羽越本線の貨物列車(2015年02月13日、新潟県村上市)

東北からどんどん若者が減っている

1985年と比較した2020年国勢調査の年代別人口の減少は、15歳未満は関東が35%減、関東を除く全国平均が46%減、東北が55%減、15~29歳は関東が22%減、関東を除く全国平均が34%減、東北が42%減、30~64歳は関東が14%増、関東を除く全国平均が12~%減、東北が20%減、65歳以上は関東が236%増、関東を除く全国平均が151%増、東北が134%増となっており、東北は若年層の減少率がとくに高い。

ローカル線の主要顧客は高校生だ。JR東日本は路線別の通学定期利用率を公表していないが、東北の旧国鉄線を引き継いだ三陸鉄道、阿武隈あぶくま急行、会津鉄道、秋田内陸縦貫鉄道、由利高原鉄道、山形鉄道では、輸送人員に占める通学定期の割合は6社平均で33%だ。

定期外利用に影響を及ぼしたと考えられるのが高速道路の整備だ。東北地方では、1987年4月時点の開通済みの高速道路は東北自動車道(浦和~青森間)だけだったが、その後の35年間で主要都市を結ぶ高規格道路が次々に開通した。自動車も30年で飛躍的に増加。一般社団法人自動車検査登録情報協会の統計によると、東北6県の自動車保有台数は1988年から2018年で2倍以上増加している。