激甚災害の煽りを最も受けているローカル線
さらに、ローカル線を悩ませるのは自然災害だ。ローカル線は設備が古いうえ、山間部を幾度も河川を渡りながら縫ぬうように進むため、土砂災害、河川氾濫の影響を受けやすい。自然災害の激甚化、頻発化により、復旧してもすぐに違う箇所が被災するくり返しだ。
2022年8月3日から4日にかけて東北地方を襲った豪雨では、津軽線蟹田~三廐間で路盤が流出。復旧費用は少なくとも6億円と見込まれたが、輸送密度100人程度の区間だけに、JR東日本は復旧に難色を示した。2024年に入り、沿線自治体がバス転換を受け入れる方針で一致したことから、このまま廃止となる公算が大だ。
また、奥羽本線下川沿~大館間で路盤流出、磐越西線喜多方~山都間で橋梁が倒壊。復旧に奥羽本線は1年、磐越西線は8カ月を要した。橋梁が崩落した米坂線羽前椿~手ノ子間は復旧に86億円、工期5年と見られており、JR東日本は「当社単独の復旧は困難」と表明した。
この区間も輸送密度は300人程度で、仮に復旧しても持続的な運行は難しいことから、廃止・バス転換も含めた協議が続いている。
悲劇は続く。同年8月13日から14日も台風8号の影響で豪雨となり、奥羽本線、五能線、花輪線が被災した。橋梁が損傷した五能線鰺ケ沢~岩館間は復旧に1年、路盤が流出した花輪線鹿角花輪~大館間は9カ月を要した。
県とJRで上下分離した「只見線」のケースも
そうなると自然と浮上するのが、多額の費用をかけてまで復旧すべきか、という議論だ。路線上のいずれか1か所でも寸断されれば運転できなくなる鉄道より、復旧が容易で、迂回して運行が可能なバスの方が災害に強く、費用も安い。
一方、廃線の議論を覆したのが、2011年7月の新潟・福島豪雨で会津川口~只見間が被災した只見線である。
同区間は被害が大きく、JR東日本はバス転換を求めたが、福島県が存続を要望。県が線路や駅舎などを保有してJRに貸し付ける上下分離方式での復旧が決定し、2022年10月に運転を再開した。約80億円の復旧費用は国と地元とJRが3分の1ずつ負担し、復旧後の維持管理費年間約3億円を県と沿線自治体が全額負担することとなる。