現金からキャッシュレス決済へのシフトが進んでいる。金融アナリストの高橋克英さんは「クレジットカードのタッチ決済の導入が公共交通機関で進んでいる。大阪・関西万博を控えた関西をはじめ、首都圏でも東急電鉄や東京メトロが実証実験を開始した。JR東日本のSuicaの脅威になるかもしれない」という――。
駅の改札
写真=iStock.com/aozora1
※写真はイメージです

「新札をまだ見たことがない」現金離れの実態

今年7月、2004年以来、20年ぶりにデザイン変更がされた紙幣が発行された。新たな紙幣は、1万円札が「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一、5千円札は津田塾大学の創設者である津田梅子、千円札は細菌学者の北里柴三郎の肖像が採用されており、すでに手にしたり利用した読者の方も多いだろう。

一方で、通勤・通学ではSuicaなど電子マネー、コンビニや食事、買い物ではPayPayなどQRコード決済やクレジットカード利用なので、現金を利用する機会がなく、新札をまだ手に入れていない読者の方もいるかもしれない。

実際のところ、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度にするという政府目標もあり、経済産業省によると、2023年のキャッシュレス決済比率は、前年比3.3%増加の39.3%(126.7兆円)に達しており、右肩上がりで成長を続けている。

キャッシュレス決済額の内訳では、高額決済が多く広く普及しているクレジットカードが83.5%(105.7兆円)と大勢を占めている。その他、QRコード決済が8.6%(10.9兆円)、電子マネーが5.1%(6.4兆円)、デビットカードが2.9%(3.7兆円)となっている。

「QRコード決済」が電子マネーを上回る状況

あらためて、「電子マネー」とは、利用する前に現金をチャージして使う決済サービスを指す。代表的な電子マネーには、交通系では、Suica、PASMO、ICOCAなどがあり、小売流通企業では、楽天Edy、WAON、nanacoなどがある。

QRコード決済は、スマホの決済アプリと、QRコードを利用した決済方法であり、コードを読み込むことで、利用者の決済アプリに登録したクレジットカードや銀行口座、電子マネーなどから支払いが行われる。代表的なQRコード決済には、PayPay、楽天Pay、au PAY、d払いなどがある。

注目すべきは、QRコード決済が、電子マネーを上回る状況が2年連続で続いている点だ。ポイント経済圏と連動したPayPayなどQRコード決済業者によるキャンペーンが功を奏しているといえる。