モーニング娘。のデビュー曲にあった苦労
K-POP人気もあり、オーディション番組が盛り上がっている。だが『スター誕生!』など、昔からオーディション番組はあった。なかでも、モーニング娘。(以下、モー娘。)を生んだテレビ東京の『ASAYAN』は有名だろう。そのオーディションは、実は従来にない“掟破り”の連続だった。中心人物はつんく♂。どこが画期的だったのか?
「あと5枚、4枚、3枚、……」とカウントダウンが始まる。そして「5万枚達成です」のアナウンスに号泣しながら肩を抱き合う中澤裕子、石黒彩、飯田圭織、安倍なつみ、福田明日香の5人。場所はナゴヤ球場だ。5人は詰めかけたスタンドのファンに向かって、「デビューの夢、叶えられてとてもうれしいです」など、口々に感謝の言葉を述べる。
「モーニング娘。のデビュー曲は?」と聞かれてすぐ「愛の種」と答えられるひとはかなりの通だろう。ただ正確には、メジャーデビュー前のインディーズシングル。作詞・作曲もこの時点ではつんく♂(表記としては「つんく」)ではない。
事の始まりは、『ASAYAN』のなかでつんく♂がモー娘。の5人に「『愛の種』を5日間で5万枚手売りせよ」という課題を与えたことだった。それができなければ、メジャーデビューさせないという。そして全国各地での運命の手売りが始まった。
モー娘。とシャ乱Qの共通点
大阪、福岡、札幌の3日間を終え、残り9533枚。そして4日目名古屋。前日の街頭PRではまったく反応がなく、しかもその夜はかなりの雨模様。さすがに不安になる5人だったが、祈りが通じたのか当日は快晴。多くのファンが集まり無事達成となったのだった。「いざとなったら学校辞めます」と悲壮な決意で臨んだメンバーもいたが、それが報われたかたちだった。
そして1998年1月につんく♂の作詞・作曲による「モーニングコーヒー」でメジャーデビュー。そこからヒットが続き、いきなり同年の『NHK紅白歌合戦』初出場。現在も続くモー娘。の歴史が始まる。
実はつんく♂が属するシャ乱Qにも、似たような経歴があった。頭角を現したのは、大阪のストリートライブ、いわゆる「城天」。その後コンテストで優勝したことをきっかけにメジャーデビューとなった。
つまり、つんく♂もまた、モー娘。と同様インディーズを経てメジャーデビューしたのだった。その点、両者にはエリートではないたたき上げ特有の“下剋上”感があった。