「SMAP×SMAP」(1996~2016年、フジテレビ系)は、いまでも「伝説の番組」として語り継がれている。どこがすごかったのか。社会学者の太田省一さんは「バラエティ番組として優秀なだけではなく、ドキュメンタリー性も兼ね備えていた。しかしそれはSMAP自身をリアリティショー化するリスクをはらんでいた」という――。
2011年9月16日、北京でのプロモーションイベントに出席したSMAP
写真=China Xtra via AFP/時事通信フォト
2011年9月16日、北京でのプロモーションイベントに出席したSMAP

衝撃だった「SMAP×SMAP」初回の放送内容

「武器はテレビ。」。これは、2014年にSMAPが総合司会を務めた『FNS24時間テレビ』のタイトル。むろんベースになっているのは、彼らの冠番組『SMAP×SMAP』である。まさにSMAPにとっての最強の「武器」だった『SMAP×SMAP』。その開始と終了はテレビにとってなにを意味したのか? 現在のテレビにも通じる問題として探ってみたい。

1996年4月15日月曜夜10時30分(この日は、この後述べる特別な事情で本来の10時スタートではなかった)、テレビにとってひとつの新しい歴史が始まった。アイドルグループSMAPの冠バラエティ番組『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の初回である。

1社提供であるロート製薬のおなじみの映像から切り替わると、メンバー6人(このときは森且行がまだ在籍していた。森は、同年5月にプロオートレーサーへの転身を理由に脱退することになる。6人での最後のステージもこの番組で放送された)が控えで雑誌を読んでいる。ふと気づいたように、木村拓哉が「あ、でももう本番始まるぜ」と言うと、香取慎吾も「もう本番始まってるって!」と急がせる。中居正広が「『SMAP×SMAP』、略して『スマスマ』。毎週みんな頑張っていこうね。オー!」と明るく音頭をとる。

バンジージャンプした意外なメンバー

ただ、ひとりだけうなだれ、黙っているメンバーがいる。草彅剛だ。それを見つけた森且行が、「あれ、なんか気合入ってないね。剛君」と声をかける。稲垣吾郎も「これ、ちょっと一発目なんだから気合入れていこうよ」と草彅に語りかけ、「さ、スタジオに行こうよ」と立ち上がる。

しかし、それでも草彅のテンションは低い。しびれを切らした中居正広が、「剛、気合入れていかないと、オレらの人気なんかすぐに落ちちゃうよ」と言う。「落ちないよー」と反論する草彅。「落ちるっ」「落ちないって」「落ちる!」「落ちない!」と押し問答の末、中居が「落ちるって言ってんだろ、バカヤロー」と草彅にパンチ。飛ばされた草彅が壁を突き破る。するとその外はなぜかバンジージャンプになっていて、「ウワー、怖いよー、ちょっとー‼」と落ちながら絶叫する草彅の姿が。

当時、まだここまで「体を張るアイドル」は珍しかった。それを象徴するオープニングである。このパターンは、趣向を変えてこの後も何回か続くことになる。軽いコントだが、ゴールデンプライム帯で自分たちの冠番組が始まる緊張と不安が伝わってくるようだ。