お笑いコンビ「とんねるず」は、なぜテレビの人気者となったのか。社会学者の太田省一さんは「それまでの芸人にはない華があった。加えて、テレビのお約束をことごとく破壊していく破天荒な姿を若者が支持し、大人気となった」という――。
インターネットドラマ「肉まん」「SHADOW」の制作発表。左からとんねるず、高島礼子、後藤理沙=2000年7月、東京・新宿のホテル
写真=共同通信社
インターネットドラマ「肉まん」「SHADOW」の制作発表。左からとんねるず、高島礼子、後藤理沙=2000年7月、東京・新宿のホテル

とんねるずはいかにして「時代の寵児」になったのか

これまで人気になったお笑い芸人は数多い。だが、最大瞬間風速のすごさという点で、とんねるずに勝る存在はいないだろう。この連載では番組にスポットを当ててきたが、今回はとんねるずという“ひと”を取り上げる。2人が残した破天荒なエピソードの数々を振り返り、とんねるずとは何者だったのかを探ってみたい。

とんねるずというと必ず持ち出されるのが、「テレビカメラ破壊事件」だ。

1980年代、深夜番組『オールナイトフジ』(フジテレビ系)での生放送中のこと。女子大生ブームを巻き起こしたこの番組のレギュラーだったとんねるずは、彼ら初のヒット曲「一気!」を歌った。

「一気!」は学生のコンパ風景を歌った宴会ソング。石橋貴明(以下、タカさん)と木梨憲武(以下、ノリさん)は応援団風の学ラン姿で激しく動き回った。その勢いでタカさんがテレビカメラをぐいぐい引っ張ったからたまらない。大きなカメラがそのままドスンと倒れてしまった。

後ろで見ていた女子大生たちは「キャー!」と悲鳴を上げ、スタッフ数人が寄ってきてあわててカメラを起こそうとする。タカさんは固まってしまい青ざめた表情。ノリさんも、「オレ知らねー」「シャレになんない」と事の重大さにドン引きになっている。

テレビカメラは高価なもの(1500万円だったという)。弁償となれば、まだ人気が出始めたばかりのとんねるずにとって痛かっただろう。実際はなんとか保険が下り、その後とんねるずも大ブレークを果たした。このテレビカメラ破壊事件も、とんねるずらしい武勇伝として語り継がれることになった。