うなぎ専門店「鰻の成瀬」が2年で200店舗という異例のスピードで全国に出店している。フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さんは「鰻の成瀬は参入障壁が高いとされるうなぎ専門店のハードルを徹底的に下げた。そのため、飲食未経験の人からもフランチャイズ加盟希望が殺到し、驚異の出店スピードにつながっている」という――。
1600円で「うな重」が食べられる
うなぎ専門店チェーンの「鰻の成瀬」が1号店の出店から2年足らずで200店舗を超えるという異例のスピード出店で存在感を高めている。SNS上でも「謎の急成長」と呼ばれて注目を集めている。
「鰻の成瀬」の一番のポイントは相場価格に対して「安い」こと。一般的に5000円、6000円の「うな重」が1600円からで食べられる。出店場所は駅前一等地もあるが、駅から離れた住宅街の中というパターンもある。1号店を横浜にオープンしたのが2022年9月で、フランチャイズ(FC)展開を始めたのはその約半年後。創業してから2年足らずの24年7月上旬には200店舗を超えた(うち直営は10店舗)。
筆者は同店を展開しているフランチャイズビジネスインキュベーションの代表、山本昌弘氏(40)に取材した。取材のために、これらの店舗をたくさん訪ね歩いて、同店のうな重を食べ続けた。そこで、山本氏が解説をしてくれたことと、筆者の印象を交えて「鰻の成瀬」のことを以下に述べたい。
「松・竹・梅」だけの割り切ったメニュー構成
筆者が初めて「鰻の成瀬」を訪れたのは4月3日、創業店舗の横浜本店である。横浜駅から徒歩約8分、横浜駅の1駅隣、相鉄線平沼橋駅から6~7分の距離のところにある。マンションが立ち並んだ住宅街で、まわりには商店がほとんどない。
店舗はマンションの1階にある。オープンは11時。11時15分ごろに入店したところ、15席ほどの小さな店内には、1人客が1人、2人客が2組いた。なかなかの繁盛店ではないか。
フードメニューは「うな重」の「松」2600円(税込、以下同)、「竹」2200円、「梅」1600円の3つのみ。ドリンクは瓶ビール、冷酒、ノンアルコールビールのみ。酒のつまみとしての「蒲焼」はない。漬物もない。実に割り切ったメニュー構成である。