※本稿は、高橋浩一『営業の科学』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
リマインドが負の感情を抱かせてしまう理由
ここまで、「検討しますの仮面」に対して、どのように助け舟を出すとお客様が動いてくれやすいかをお伝えしてきました。それでもなお、「検討しますのでお待ちください」とシャットアウトされてしまったらどうするかについて、本節で触れておきたいと思います。
お客様は、クロージングされると「まだ考えがまとまっていないうちに返答するのは怖い」という心理から「とりあえずお待ちください」と言いがちです。
では、「検討しますのでお待ちください」とシャットアウトしてくるお客様は、時間が経過していくと、どのような心理になるでしょうか。
クロージングへの返答を保留したまま時間が経過すると、以前に提案を受けた件は次第に忘れかけてきます。ただ、頭の片隅には「そういえば、あの件、まだ返事していないな。どうしよう……」と、気になっているはずです。
先日に提案を受けた内容は、だいぶ記憶も怪しくなってきていますから、今さら思い出してあれこれ考えるのも気が重たい。そのような状態です。
そんなお客様に対して「ご検討状況はいかがでしょうか?」という単純なリマインドは効果があるでしょうか。お客様のほうでも、「何か気まずいな」とは思いつつ、忙しいふりをしてなんとかやり過ごそうとするはずです。
それに対して、返事がないからといって、「ご検討状況はいかがですか?」という単純リマインドを繰り返してしまうと、お客様には「こっちも忙しいのに」という、マイナス感情が湧き起こるでしょう。こうなってしまうと、受注まで持っていくのは至難の業です。
メールの件名は「お役立ち感」を出す
ストレートなリマインドに対してお返事がもらえればいいのですが、最大のリスクは「メールへの返信もない、電話にも出てもらえない」という状況が続いてしまうことです。
いったんこうなってしまうと、こちらとしてもさらなるリマインドはしづらいというのが心情でしょう。「お客様から検討します」と言われてしまい、少し時間が経過したらどうするべきか?
ここで鍵を握るのは「お役立ちメール」です。単純なリマインドには返信しないお客様も、「役に立つ」と思った情報にはリアクションを示す傾向があります。次のグラフ(図表1)をご覧ください。
お客様が「役に立つ」と思ってさえくれたら、返信が来る確率はグッと上がります。そこで、お客様にとって(読み飛ばさずに目を通す)意味を持つ情報を件名に入れるようにしましょう。
いろいろなやり方はありますが、一つの例を挙げます。
たとえば、「●●様が9月28日におっしゃっていた『XXX』の件」のように、お名前、日付、商談の会話に出てきたキーワードを件名に入れるのです。単なる簡潔リマインドはスルーされやすいものです。
そして、時間が経てば経つほど、お客様が提案に対して回答するインセンティブは落ちていきます。
そこで、「9月28日のMTGで、●●様が“年内にクイックヒットの成果が欲しい”とおっしゃっていました。成果が年内に報告されるには、逆算すると、10月中旬には施策開始の必要があるかと……」のように、提案への回答を急ぐメリットの文脈を明らかにし、件名に反映させるのです。