※本稿は、高橋浩一『営業の科学』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
お客が「困っている」と言いにくいワケ
多くの営業は、お客様のニーズを知ろうと「困っていることはありませんか?」という角度から質問します。しかし、正直に「困っている」と言うことをお客様はためらいます。売り込まれることを警戒するからです。
そんなお客様は、とっさの防御反応で「まあ、今は何とかなっていますので……」と返してきます。すなわち、「はぐらかしの仮面」をかぶるわけです。
ここでポイントになるのは、「困っていることは何ですか?」と聞いてしまうと、売り込まれたくないお客様からは「本当の悩み」が出てきづらくなるということです。
そこで、発想を切り替えてみましょう。(本当は困っているのに)とっさの防御反応で「困っていない」というお客様の心理に立つなら、むしろ「困っていないんじゃないですか?」と聞かれたほうが「いえいえ、そんなことはないですよ~」のように、悩みを言いやすくなります。お客様が自ら進んで言ってくれるなら、営業としてはだいぶやりやすいはずです。
すなわち、「はぐらかしの仮面」を外してもらうために、「むしろ、困っていないのでは?」という方向から切り込んでいくのです。
“売り込みだ”と警戒させない質問とは
お客様が本当に、まったく困っていなかったら、はたして、営業の訪問に時間を割くでしょうか。時間をとって営業を迎えているからには、何らかの興味はあるはずです。
中には、「強引にアポイントを取ってきたので、しかたなくOKしたんです」というケースもあるでしょうが、それにしても、「貴重な時間を割くからには、価値のある話を聞きたい」ぐらいの小さな期待はあるでしょう。
「むしろ、困っていないのでは?」という角度から質問していくほうが、お客様は「困っていること」や「商談への期待」を素直に話しやすくなります。それを深掘りすることで、やがて「今、この商談に時間を使っている理由」に行き着きます。
新規で初回訪問したお客様に「御社の課題は何ですか?」と聞いて「今はそれほど困っていません」という返事が来るのは、本当に困っていないということではなく、「課題を話して無理に売り込まれるのは嫌だ」というとっさの防御反応です。
そこで、この防御反応が出にくいように、あえて逆の角度から聞くのが核心質問です。
「御社は、すでにこのテーマにも取り組まれているでしょうし、一見すると困っていないように見えるのですが……」と切り出してみると、お客様は「いえいえ、まだ取り組みは十分ではないですよ。実は●●●に困っていまして」のように、自然とお悩みを口にしやすいものです。