「高校受験をし直そうかと考えています……」
近年、学校名に「国際」やカタカナ文字がつく私立中高一貫校が増えている。こうした学校では、「英語教育」や「グローバル教育」に力を入れており、世の中の動向に敏感なパワーカップル家庭を中心に人気を集め、中学受験激戦校となっている。
だが、猛勉強をしてなんとか滑り込んだにもかかわらず、入ってから後悔する家庭も多い。すみれちゃん(仮名)のお母さんもその一人だ。
すみれちゃんは2年前、とある中堅のグローバル校に合格した。その学校はもともと女子校だったが、数年前に共学化したのを機に英語教育に力を入れるグローバル校に生まれ変わった。グローバル校の先駆け、渋谷幕張中や渋谷渋谷中ほど帰国生の受け入れは多くないし、偏差値的にはまだそこまで高くない。話題の新設校ゆえ受験倍率は高いけれど、入ったら英語教育に力を入れてくれるので、グローバル社会において有利になるのではないか。そんな期待から、第1志望校に選んだのだ。
ところが、2年経って、すみれちゃんのお母さんからこんな連絡が来た。
「人気の学校に入ったのはいいけれど、英語の勉強ばかりに力を入れていて、他の教科が心配です……。うちは海外の大学へ入れたいと熱望しているわけではなく、どちらかといえば国内の大学に進学してほしいと考えています。でも、このままでは共通テストに必要な学力が身に付かないように感じて……。実は、高校受験をさせようか考えているんです」
英語について行くのに必死で他の教科に手が回らなくなる子も
「これからは、英語くらいは話せないと将来困るのではないか」そんな感覚でグローバル校に惹かれる親は多い。大学受験であれほど英語を勉強したにもかかわらず、ろくに聞けない、話せない。そんな自分の英語力に嫌気が差し、わが子にはしっかり英語力を身に付けさせたいと願う。そんな親たちにとって、昨今次々と誕生しているグローバル校は、輝いて見えるのだろう。
確かに、「うちは英語教育に力を入れています」「数学も英語で学びます」など、説明会で大々的にアピールしている学校は、英語教育に熱心だ。従来の日本の英語教育にはなかったリスニングやスピーキングの授業に多くの時間を充て、ネイティブ教員を潤沢にそろえ、「使える英語」の育成をしてくれる。
しかし、授業のコマ数には限りがある。英語教育に力を入れれば、そのぶん他の教科の学習が手薄になりやすい。または、ハイレベルな英語の授業について行くのに必死で、他の教科にまで手が回らないという子も出てくる。先に出てきたすみれちゃんがまさにそういう状況に陥っていた。