中学受験において親は何をするべきなのか。プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康さんは「親のサポートは不可欠だが、勉強は教えないでほしい。親が教えると必ずといっていいほど成績が下がってしまう」という――。
落ち込む男の子
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです

「私がなんとかしなきゃ!」が不幸の始まり

中学受験には親のサポートが不可欠だ。そう言うと、「私は勉強を教えられる自信がない……」と下を向く親がいる。心配しなくていい。中学受験で親が勉強を教える必要はない。中学受験のプロ家庭教師である私から言わせてもらえば、「できれば教えないでほしい」というのが本音だ。なぜなら、親が教えると必ずといっていいほど成績が下がっていくからだ。

中学受験の指導に携わって40年以上がたつが、親が自分で勉強を教えたくて教えているというケースはほとんどない。多くの場合、「わが子が塾の授業についていけないのでは……」と思い込み、「親である自分がなんとかしなければならない」と義務感に駆られ教え始める。冒頭の発言のように、教えることに自信がない親は、個別指導塾を併用したり、家庭教師を付けたりするなど第三者の力を借りようとするが、自分の学力に自信がある親は、その発想が生まれにくい。今の中学受験は難しいと言われているけれど、しょせん小学生の勉強。自分に教えられないわけがない、そう高をくくっているのだ。

文系母「国語なんて勉強をしなくてもできる」

中学受験は国算理社の4教科の総合点で合否が決まる。子供に勉強を教える場合、算数・理科の理系科目は父親、国語と社会の文系科目は母親と分担されがちだ。実際、子供に勉強を教えようとする親は、難関大の理系出身の父、難関大の文系出身の母という構図が多いように感じる。親が高学歴なら勉強も教えられるし、子供の受験に有利に働くのではないかと思う人は多い。しかし、私の経験からすると、親が高学歴であればあるほど、勉強は教えない方がいいと思っている。なぜなら、わが子の「できない」「分からない」理由を理解しようとしないからだ。

特に文系出身の母親は、わが子がなぜ国語ができないのか、理由がまったく分からない。「国語なんて勉強をしなくても、できるでしょう? 塾に通っているのに、なんでこんな点しか取れないのか理解できない」と平気な顔で言う。そういう人は、国語はセンス、またはパターンで覚えればいいと思っている。

しかし、小学生の場合、そもそも文中に出てくる言葉を知らなかったり、文章の読み方を知らなかったりする。また、子供は一つでも知らない言葉があると、途端に全体が分からなくなってしまうこともある。大人のようにこれまでの知識や経験を結びつけて理解するには、圧倒的に知識も経験も足りないからだ。こうしたことを知らずに、「なぜできないの?」「なぜ分からないの?」という言葉を何度も、何度も子供に投げる。