わが子に中学受験をさせるべきか迷ったときの判断基準はあるのか。プロ家庭教師集団・名門指導会の西村則康さんは「中学受験で親が負担するのは金銭面だけではない。親のサポートも不可欠だ。受験を考えたら実際の入試問題を見てみてほしい」という――。
角帽がのせられたブタの貯金箱
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中学受験は金銭面以外にも負担がある

2024年度から東京都の都立・私立高校の授業料が無償になった。東京に住んでいればどの家庭も、これまでよりはるかに少ない負担で私立高校に通わせられるようになったのだ。これは子育て中の家庭には朗報だろう。

昨今、首都圏では中学受験熱が高まっている。その背景にあるのが、改革途中の大学入試に対する不安や、公立のICT環境の遅れなどだ。しかし、中学受験をすると私立の中高一貫校に通うことになり、6年間の授業料が重くのしかかる。その負担が減るのは、ありがたいことこの上ない。そして今、「6年間はムリだけど、3年間ならなんとかなりそう」という家庭が、中学受験に注目し始めている。

しかし、私は「授業料が半分に抑えられるから、中学受験をさせてみるか」という安易な発想を危惧している。なぜなら、中学受験はそれほど甘い世界ではないからだ。

中学受験をすると、お金がかかりそうというイメージを持っている人は多いだろう。確かに受験をするとなると、それを専門に教える進学塾に約3年間通うことになるので塾代がかかるし、その先の学費もかかる。その学費の半分の負担がなくなるのだから、これまで「うちの収入ではムリ……」と諦めていた家庭にもチャンスが広がったと捉えてもいいだろう。しかし実のところ、中学受験全体で見ると、金銭面の負担はほんの一つの要素にすぎない。それ以上に覚悟が必要になるのは、親である自分が子どもの受験サポートをできるかどうかだ。

親のサポートがなくては合格できない

わずか11~12歳の子どもが挑む中学入試は、親のサポートがなければ成り立たない受験だ。中学受験をするからには、毎日の家庭学習は不可欠だし、基礎学力はあって当たり前という前提で難しい内容の勉強をしていく。しかも、昨今の入試問題は、親たちがイメージする「暗記とパターン学習をくり返すことで鍛える」といった受験勉強のやり方が通用せず、自らの手と頭を使って考える思考型の問題へと変わってきている。

また、塾のテキストで習った内容(類似問題)がそのまま出ることはなく、今世の中で起きていることに絡めた問題や、小学生の子どもが知らない初見の内容の問題を出したりするなど、日頃からどれだけ世の中について親子で対話を重ね、身の回りのことに好奇心を持って生活をしてきたかを見る問題が増えている。

こうした問題に対応するには「何をやるか」よりも「どのように学習していくか」といったマインドのほうが重要になってくる。しかし、塾は「何をやるか」は教えてくれるけれど、「どのように学習するか」は家庭に丸投げだ。こうした事情を知らずに、ただ金銭面の負担が減るからと、中学受験に参戦してしまうと親子で痛い目に遭う可能性が高い。