「褒めて伸ばす」という子育てには問題点がある。スクールカウンセラーの藪下遊さんは「子どもが成長するためには適度な不快が必要。『褒めて伸ばす』が行き過ぎて、『やりたくないことはしない』と考える子どもが増えているのではないか」という――。(第2回)

※本稿は、藪下遊、髙坂康雅『「叱らない」が子どもを苦しめる』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。

修学旅行出発前のイメージ
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです

「なかなか変わらない」ことには理由がある

学校は「惰性が強いシステム」です。入力から出力までに時間がかかるということであり、つまり教育に対して、何かしらの働きかけをしても「なかなか変わらない」ということになります。この点は不登校への対応や、学校で起こるさまざまな問題への対処の遅さとして批判されがちですね。

一斉教育には問題があるのになかなか改善されないとか、多様性を認める形になっていないとか。ですが、学校が「惰性が強いシステム」になっているのには、ちゃんと理由があります。

社会状況がどれだけ変わっても、世の中がどんなに混乱したとしても、学校は「そう簡単に変わるわけにはいかない」のです。社会状況や世の中の雰囲気で学校がころころ変わってしまえば、次世代を担う子どもたちに「安定した教育」を提供することができなくなります。

教育というのは水などと同じ社会的共通資本ですから、どんなに社会が混乱しようが、天変地異が起ころうが「一定以上の質のものを提供し続ける」ことが重要です。社会全体が安定的成熟を得るために、教育は「そう簡単に変わらないもの」「そのように設計されている制度」なんです。ただ、そんな「惰性の強いシステム」を備えた学校でさえ、ここ数十年の間で少しずつ変わってきています。