子供の前で夫婦喧嘩をしてもよいのか。小児科医の成田奈緒子さんは「両親が喧嘩をしても、そばで見ている子供にとっては『そうか、こう反論できるな』と学ぶ機会になるため、隠れて争う必要はない。ただし、子供のいる前では争わないようにした方がいいこともある」という――。

※本稿は、成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

男の子と女の子の脳育ての違い

「男の子と女の子で、脳育てに違いはありますか?」と聞かれることがよくあります。

男女の脳には違いがある、という話は90年代ごろから盛んに言われていましたが、最近は、さほど個々人の人格に影響がないことがわかっています。

脳の器質的な男女差として唯一挙げられるのは、「脳梁のうりょう」という、脳の左右の半球をつなぐ神経細胞の束が女性のほうが太いことです。

そこから、女性のほうが右脳と左脳の情報交換が多いためマルチタスクが得意な傾向があり、男性は一つのことに集中しやすい傾向がある、と示唆されることもあります。

とはいえ、集中力の高い女性もいれば、マルチタスクが得意な男性もいることはご存じの通り。脳育ては性差ではなく、「個人差」にフォーカスするのが妥当と言えるでしょう。

乳児期に一つだけ言えるとしたら、男の子にはとくに「フルセンテンス」に力を入れるのがおすすめです。男の子のほうが一般に、言葉の初出が遅めだと言われているからです。赤ちゃんの目を見つめて、しっかり口を大きく開け閉めして話しかけることで、言語を司る脳の育ちを促すことができます。

手のひらの上に浮かぶ脳のイラスト
写真=iStock.com/Natali_Mis
※写真はイメージです

「性差」でなく「個人差」で育てたいこと

一方、男女差を無くした方が良い点もあります。

日本では、女の子には家事を教えるのに男の子には教えない、という家庭がしばしば見られます。これはおそらく「家事は女性がするもの」という古い価値観に基づくものだと思われます。

しかし、「おりこうさんの脳」は家庭生活の中で役割を持つことで育ちます。男の子にだけそのチャンスを与えないのは、脳育ての観点から見ても「不平等」です。

また、たまに見られるのが、女の子には前述のマルチタスク的な作業を求め、男の子には集中して何かをさせる、といったアプローチです。ここも性別ではなく、本人がどちらの傾向が強いかを見極めましょう。

集中が得意なタイプならば好きなことに集中させる、同時進行が得意なら「家事をしながらその日の出来事を話す」という風に、本人の能力をさらに伸ばすのが基本です。

その一方、ときには苦手なこともさせてみましょう。集中タイプの子にマルチタスクをさせたり、マルチタスクの得意な子を一つのことに集中させたりすることで、苦手なことも「そこそこ」できるくらいに育てていくのが良い方法です。