なぜ不登校になってしまう子どもが増えているのか。スクールカウンセラーの藪下遊さんは「最近の子どもは『思い通りにならないことに耐えられない』という特徴を持っている。親や周囲の人から叱られた経験がないからか、『思い通りになるのが当然』と考えるようになってしまっている。子どものこころが成熟するためには、適切な押し返しが必須である」という――。(第1回)
※本稿は、藪下遊、髙坂康雅『「叱らない」が子どもを苦しめる』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。
授業時間が長いだけで不登校になる事例も
最近の、学校で現れる子どもたちの不適応の特徴の一つとして「思い通りにならないことに耐えられない」ということがあります。これだけではわかりにくいと思いますから、いくつか例を示しましょう。
【事例1:授業時間が長いから学校に行かない】
小学校一年生の男子。小学校入学後しばらくしてから登校を渋るようになる。理由は「授業時間が長いから」と話す。学校としては、親に送り出してほしいという思いはあるが、「本人が嫌がるので」と親は子どもに言われるがままである。
五月雨式の登校は続き、学年が上がってもその傾向は変わらず、もともと学力には問題がなかったにもかかわらず、徐々に学力の低下が起こり、それがまた登校の難しさにつながるという悪循環になっている。
【事例2:都合が悪い状況で「いじめ」と主張する男子】
小学校四年生の男子。同級生とのやり取りで自分の要求が通らない状況や否定的な場面で「いじめられた」と主張する。例えば、自分がやりたい遊びができないとき、ドッジボールで当てられたときなどにそういった発言が見られる。親は男子がいじめられていると考え、対応や謝罪を学校に要求する。
この二つの事例の印象はずいぶん異なるものだと思いますが、共通しているのは「思い通りにならない場面」に対して不満や拒否感を抱えているということです。