発達障害の人はどんなことに苦しんでいるのか。精神科医の岩波明氏は「ASDの人はいじめの被害にあいやすい。そして記憶力が優れているせいで、いじめの記憶を忘れられず、成人しても苦しんでいる」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、岩波明『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

子どもたちの影のイメージ
写真=iStock.com/AlexLinch
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ASDの子どもが集団生活でぶつかる壁

ASDのお子さんは、全体の中で自分の持ち分や役割を察知するのが苦手な傾向があります。グループの中で役割分担して作業をすることができなかったり、1時間で10人が発表する場で、1人で何十分も発表してしまったり……といった具合です。

私が担当していたASDの人が、以前こんな話をしてくれたことがあります。

「小学校の頃、みんなで文集を作る機会がありました。テーマを分担し、一人ひとりで調べて書いて、それを持ち寄って作る形式でした。自分は大好きな『電車』というテーマを与えられたので、大喜びでした。夢中になって調べて書いて、完成したものを学校に持っていったら、クラスメイトから大ひんしゅくを買いました。『なんで100ページも書いてきたんだよ!』って言われたのですが、どうしてそれがダメなのか自分ではよくわかりませんでした」

こういった場合も、先生やクラスメイトが本人の特性を理解して、他のクラスメイトとの間の「仲介役」あるいは「調整役」の立場に立ってくれれば、もう少しよい結果になったと思います。