足し算の計算はできるのに「リンゴ2個とミカン3個を足すと全部で何個でしょう」という問題に対して「リンゴとミカンは足せません」と答える子どもには、どのように教えたらいいのか。信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授で、同附属病院子どものこころ診療部部長の本田秀夫さんは「自閉スペクトラムの特性があり、暗黙の了解を読み取るのが難しい子どもは『リンゴとミカンは別々のものだから足せない』と考えることがある。大人はまず、子どもの考え方を受け止め、どうしたらその子が学習しやすくなるのかを考えてほしい」という――。(第3回/全3回)
※本稿は、本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「含み」がわからないと解けない問題がある
自閉スペクトラムの特性がある子は、会話をしていて「含み」がわからないことがあります。その特徴が、勉強の場面で見られることもあります。その一例を描いたのがこのマンガです。
マンガでは1年生の子どもが算数の文章問題で「リンゴ2ことミカン3こをたすと」と問われて、「リンゴとミカンはたせません」と答えていました。
この子はすでに九九も言えるようになっている子で、2+3の計算ができないわけではありません。算数の考え方がわからないのではなく、文章の「含み」がわからなくて、正解が言えなかったのです。
リンゴとミカンの違いを気にする子
この場面で学校の先生は「ふざけてるわけじゃなさそうだし」と思いながらも、戸惑っています。子どもに算数の問題でこのような答え方をされたら、大人としては困りますよね。「そこは気にしなくていいよ」「2個と3個のたし算として考えて」と説明したくなってしまいます。「そのくらいのことは察してほしい」と思う人もいるかもしれません。
しかし自閉スペクトラムの特性があり、暗黙の了解を読み取るのが難しい子どもは、「リンゴとミカンは別々のものだからたせない」と考えることがあります。「ここでは果物の種類の違いを考慮しない」という前提がわからず、説明されても納得できず、どうしても嫌だと考えてしまう子もいます。