教室の中でグループに入らずぽつんとしている
「みんなと一緒にやる行動は、苦手で嫌い」「全体の中で自分の持ち分や役割を察知するのが不得意」という特性とも関連していますが、ASDのお子さんはいわゆる「場の空気」を読むことが苦手です。
小学校高学年になると、クラスにはいろいろなグループが形成され、そのグループごとに異なる空気を敏感に察知し、立ち回ることを求められるようになります。ASDのお子さんの場合、このような雰囲気を感じ取るようなことは苦手であるかほとんどできず、そもそもこういった要因すら意識していないケースも見られます。
たいていの場合、彼らはグループの輪に入らず、ぽつんといることが多いでしょう。周囲がそれを良しとしていれば何の問題も起こらないのですが、中に「あいつは何となく気に食わないからいじめてやろう」というクラスメイトがいると、いじめがクラス中にエスカレートしていくこともあります。
ほかの子どものように遊んだ記憶がない男性
Iさん(男性)の診断はASDです。子どもの頃から1人でいることが多く、特定の事柄へのこだわりが強くありました。
幼児期に「公園の砂場にいた」「三輪車に乗った」というような、他の子どものように遊んだ記憶はありません。父の実家に連れて行かれたことがありましたが、相手をしてくれる人がいないので、1人で外を眺めてバスが通ると手を振っていたことを覚えています。
親に連れられて公園に行って電車を見たり、路線バスに乗ったりしたことはあったものの、両親は仕事で忙しく、一緒に出かけた記憶はほとんどありません。そのため他の家族をうらやましく思っていました。
幼稚園では集団行動には参加していましたが、1人でポツンといることが多く、親しい友だちはできませんでした。そそっかしい面があり、幼稚園の下駄箱の近くで転んで大泣きをしたことや、近所のアパートの部屋で手を振り上げたときに、棚からレコードやステレオを落として泣き叫んだこともありました。