発達障害にはどんな特徴があるのか。精神科医の岩波明さんは「発達障害の症状の区分には客観的な指標が存在せず、個人差も大きい。専門医であっても診断に悩むことは多い」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、岩波明『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

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「発達障害=自閉症」の誤解を生んだ2つの理由

「発達障害=自閉症」あるいは、「発達障害とは、PDDあるいはASD」と誤解している人は現在でもかなりの数存在しています。この傾向は一般の人だけでなく、医療関係者にも見られます。

なぜそのような誤解が生じているのでしょうか?

第一の理由は、診断名にあります。自閉症はDSM-Ⅳ-TR(米国精神医学会が刊行している『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版)においては、「広汎性発達障害(PDD)」に含まれていました。広汎性発達障害に「発達障害」という用語が含まれていたため、発達障害といえば、それは「PDD」であり、そこに含まれる自閉症のことを示しているという誤解が生じたと考えられます。

さらに大きな要因として挙げられるのは、長期にわたって、日本の発達障害の診療は自閉症中心で行われてきたという点です。