ベストセラー、ロバート・キヨサキさんの『金持ち父さん貧乏父さん』は画期的な本だった。2000年の出版だから、もう12年前の本ではあるが、私もこの書籍がきっかけでファイナンシャルアドバイザーになろうと決めた。

日本人の勤労至上主義、潔癖な清貧思想、艱難辛苦が人を磨くという禁欲的な発想に風穴を開けてくれた本だと思っている。そして、この本を読んだ何人かの若者からの質問や相談を私が受けるうちに、意外な副産物が2つあることを発見した。

キヨサキさんはこの本で、「お金は最高のものではなくて、お金を超えた所に人生の意義があるのだ」と、まず断っている。けっしてお金がすべてというお金の亡者ではない。むしろ人の生き方を説いている。

しかし、働くことが面倒な若者たちや不幸にして職にあぶれた若者たちは、この本を読んで働く必要などないと早合点してしまったようだ。そうした若者たちが、「不労所得の作り方を教えてください」と私のところにやって来た。

「不労所得を得るにはまず頭金が必要だよ」と答えると、それは話が違うと口をとがらせる。ロバート・キヨサキさんが、「まず、ファイナンシャルアドバイザーのところへ相談に行け」と本に書いていたからだ。

そこで私は、「投資には資金が必要だし、そのためにはまず、給料をもらえる身になりなさい。せめて100万円貯まったらいらっしゃい」と優しく諭して帰したが、再び来た人はいまだにいない。若いうちは不労所得の作り方なんて考えずに、まずは働こう。自分の得意なことをして、少しでも稼げるようになろう。そうしたら、お金以外の喜びも発見できるかもしれないのだから。

2つの目の誤解は、紙のポートフォリオは時代遅れという話だ。紙のポートフォリオとは株券や保険証券、投資信託などを組み合わせた金融商品の固まり(ポートフォリオ)を指している。それらを否定して、現物の不動産やマイカンパニーを持つことをロバート・キヨサキさんはすすめている。しかし、これは相当に高度な話である。

キヨサキさんのいるアメリカは、投資の世界では日本の30年先をいっている。その最先端の国から、かなりマネー音痴なこの日本国民に最新の助言をされると、まるでタイムマシンに乗ったようで乗り物酔いをしてしまう。