自分のサラリーマン時代を振り返ると、反省しきりである。

本当にお金を粗末にしていたと思う。いつも遊ぶお金が足りなくなって、クレジットカードのキャッシングで借りていた。

あるカードの返済をするために、別のカードから借りる。またお金が必要になって別のカードから……。確か3枚のカードを使い回していたが、当時はそれを格好いいと思っていた。まるでバカである。

あれから30年。カードはより普及し、利用はより日常的となった。買い物をすれば顧客カードを、スポーツクラブに入会すればメンバーズカードを作らされ、カードの色もゴールドだのブラックだのとにぎやかである。そのたびに支払いが猶予され、リボ払いなどを使おうものならその人の購買力は数十倍に膨らむ。まるでお金持ちになった気分だ。脳からドーパミンなどの快感物質が放出される。Oh! これこそが錯覚の始まりなのである。

しかし、反対にお金持ちの人たちはだいたいがカードを嫌う。分割払いもNGだ。一括の現金払いを好む人がすごく多い。

カードを使わないメリットの第一は、現金で「感謝の気持ち」を人に与えることができることだ。第二には、出費の大きさを肌で感じることができるという点。そしてすぐに財布が軽くなるという実感があるので、無駄なものを買わなくなる。だから、お金持ちにはお金が貯まる。これが善循環。お金の法則を守る人には、どんどんお金が集まってくるわけだ。

なぜ貯金好きはお金持ちになれないのか?
[著]北川邦弘(プレジデント社)

その反面、浪費家はお金を使う痛みより、お金を使うことで得られる快楽を優先してしまうところが問題だ。日々の仕事でも、物を買うために働いているという傾向が強いのではないか。

使った分のお金が、財布からすぐに消えていけば浪費家でも、お金の減る痛みを感じて金遣いにもブレーキが利くものだ。なのに、クレジットカードでその痛みを先送りにしてしまっては、お金は逃げていく一方ではないだろうか。

それにもまして、クレジットカードに備わっている優待やマイルなどの特典で得をしているなどと感じるのは大きな錯覚である。使わなくても済むお金を使わされ、良い気分にさせられて手放しで喜んでいるだけではないか。

もちろん、カードを使うメリットは確かにある。レジの所でモタモタしたくない、スマートに人知れず会計を済ませておける、会社払いのときには領収書をもらう手間がはぶける、海外旅行ではけっこう良心的な為替レートで換算されるなど。カードを使うメリットがあれば、お金持ちはそのメリットがあるときだけカードを使う。それこそ、きちんと時と場合を考えて対応しているのだ。

「なぜ貯金好きはお金持ちになれないのか?」トークショーのおしらせ
日時
2012年9月19日(水)19:00~21:30
場所
目黒雅叙園
※お申し込みは終了しました。

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