アメリカの宝くじで大金を手にした人の10年後を追跡調査した結果がある。ほとんどの人が当選前と変わらぬ生活に戻っていた…。
きっと一時的に手にした大金はその人の人生を変えてくれたわけではなく、一時的な消費と周囲の人への施しに回ってしまったのであろう。宝くじで人生を変えられるとしたら、その大金を上手に使って、お金持ちになるための自己改革を遂げることだったはずである。
これもアメリカの調査結果だが、年収1万3000万ドル(約114万円)以下の家庭では、平均すると1年に645ドル(約5.6万円)を宝くじに費やしていることが分かった。所得が低い人ほど、よく宝くじを買うのだ。
現実の生活でお金の問題を改善できる見通しが立たない人は、生活をなお苦しくしてまでも、お金持ちになる夢を追い求めるということである。豊かな未来を期待する感情が、宝くじを買う瞬間に得られるからだろう。この事実が日本でも当てはまるとは限らないが、人間の本性としては理解できないこともない。
また、米国の研究チームは、自分が貧しいと感じている人ほど宝くじを買う傾向が強いとの調査結果を発表した。専門誌「Journal of Behavioral Decision」に掲載された同調査では、自分自身の所得が一定水準を下回っていると感じると、人はリスクを取りがちになり、貧困のワナにも陥りやすいとしている。
研究チームは、年収10万ドル(約850万円)未満の被験者グループに対し、あなた方は「低所得者」であるとほのめかして宝くじを購入させ、その枚数を比較したところ、年収10万ドル以上のグループが0.67枚だったのに対し、年収10万ドル未満のグループでは1.27枚だったという。
調査に協力したカーネギー・メロン大学のジョージ・レーベンシュタイン教授は「主観的に貧しいと感じていると、人は道理に反するぐらい多くの宝くじを買うことになる」とコメント。貧しさを感じる人ほど「お金を捨てる」傾向が強いのは、とても逆説的だとしている。
日本で売られているナンバーズは、そんな宝くじにもうひとつの仕掛けを加えた付加価値商品である。それは自己過信というスパイスを加えて、宝くじをより美味しく感じさせる結果を生んだ。人は受け身的に与えられる宝くじ番号よりも、自分で考えた番号を選択するくじのほうが当たる確率が高まると考えるようだ。