安倍晋三首相の内閣は、「ロケット・スタート」を切ったようだ。「アベノミクス」とも呼ばれる経済政策が功を奏して、人々の心理が好転している。内閣支持率も高く、停滞していた日本が、ようやく動き出した感がある。
もちろん、批判や議論もある。金融政策だけでは、その効果に限界がある。成長戦略の「第三の矢」がどのように具体化されるか、その点に注目が集まる。
ところで、アベノミクスの最大の成果は、やはり、人々の心理を動かした点だろう。景気がよくなると考える人が増えた。その結果として、株価も上がった。単なる思い込みだと言う人もいるが、必ずしもそうとは言えない。
人間の脳は、もともと、楽観的に出来ている。楽観的なくらいがちょうどよく、そのような状態で初めて脳が十全に機能するのである。
「あなたはあとどれくらい生きると思いますか?」と質問すると、多くの人が、平均余命よりも長い年月を答える。もし本当にみんなが長生きしたら平均寿命自体が変わってしまうはずだから、客観的に見ればおかしい。
「宝くじに当たる確率はどれくらいだと思いますか?」
「将来、楽しいことと辛いことは、どちらが先に起こると思いますか?」
さまざまな質問に対して、人々は実際よりも楽観的に答える傾向がある。脳は、ずうずうしくできているのだ。
このような脳内の「楽観回路」は、生きるうえで意味があるからこそ進化してきた。脳は、楽観的なくらいでちょうどいいのである。